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特集「ベストコレクション」

2019年5月20日

特集「新緑の5月ベストコレクション」②
輝ける人生(上)(2018年 社会派映画)

監督 リチャード・ロンクレイン

出演 イメルダ・スタウントン/ティモシー・スポール/セリア・イムリー

シネマ365日 No.2850

わたし、楽しそう… 

特集「新緑の5月ベストコレクション」

 シニアライフのカタログのような映画です。登場人物は60代から70代、もっと上の人もいる。この年齢になれば人生のトラブルは大抵お済みになり、あとは自分がいかに終活に臨むかの問題になってくる。リチャード・ロンクレイン監督はでもそこを大雑把にくくらない。針の穴の隙間も作らない。どんな人にも二幕目、三幕目があり、千差万別の対処がある。この年になると幸せとか不幸とかはもはや論議の外である。残されたのは、何に、いかに幸せを感じるかだ。邪険な言い方ではなく、極端に聞こえるかもしれないが、自分一人がいかに生きるかだ。監督はそれをけっこう突き放して描く。でも冷たくはない。シニアとは全員が、少なくとも本作の登場人物たちは死に向き合っている▼当然でしょう。現実生活のこの年代は、パートナーに死に別れた人もいれば生き別れた人もおり、息子や娘がいてもいなくても、目前にあって見つめざるをえないのは、自分の残り少なくなった人生だからだ。同監督の「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」なんて、階段の上り降りが辛くなった夫のために、今の部屋を売るつもりになった老夫婦が、「いや、やっぱり売らないでおく」それだけの話を、詩的なまでに描いた佳品だった。本作でも各人物の終幕が格段の手際良さで展開する。サンドラ(イメルダ・スタウントン)は警察本部長を務めた夫マイク・アボットが無事定年退職、爵位に叙せられることになり嬉しくてたまらない。何となれば自分は「レディ・アボット」と呼ばれる身分になるからだ。結婚生活35年の妻の苦労は報いられた、と思う。ところが祝賀パーティの日、夫と親友の情事を垣間見て涙にくれ、次に怒り心頭に発し、家を出てロンドンの姉エリザベス(愛称ビフ=セリア・イムリー)の元に身を寄せる。シングルの彼女は10年間音信不通だった妹をそれでも温かく迎え「人生最高のチャンスよ。マイクは横柄なうぬぼれ屋のチビよ」と一刀両断▼夫はさらに「パメラ(愛人)と暮らす。これが一番だ。いつか君もわかってくれ」と言ってきたではないか。傷つけた上に自分を破滅させた…泣きの涙の妹に姉は取り合わず「踊りに行くわ」。毎木曜日のダンス教室が楽しみなのだ。教室での会話「オンライン・デートはどうだった?」「妻同伴で現れたわ。趣味はスイミング(水泳)とスインギング(交換)を間違えて打ったの」。権高なサンドラに姉の友人チャーリー(ティモシー・スポール)は「君とあの“女王陛下”が姉妹とは信じられないよ」「バカな男と結婚してバカな連中にはまったのよ」。チャーリーはボロトラックを運転し、介護施設にいる妻の様子を見に行く日々だ。施設の費用を捻出するために彼は家を売り、小さな貨物船で生活している。ロンドンの下町の年金生活者たちの暮らしに“女王陛下”は辟易する。姉は言う「財産も称号もここでは通用しない。態度を改めなさい」そして「あなた、ダンスは得意だったでしょ。一緒に来ない?」妹はふてくされていたが、姉が保存していた高校時代のダンス・コンクールのビデオを見て「私、楽しそうね」と寂しげにつぶやいた。

 

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