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特集「最高のビッチ」

2019年6月7日

特集「最高のビッチ8」⑦ エマ・ワトソン
リグレッション(2018年 事実に基づく映画)

監督 アレハンドロ・アメナーバル

出演 エマ・ワトソン/イーサン・ホーク

シネマ365日 No.2868

純粋な邪悪 

特集「最高のビッチ8」

全米をパニックに陥れた張本人をエマ・ワトソンが演じます。整ったしっかりした顔ですので、ビッチと言っても実感がなかったのですが、大の男たちを振り回す立派なビッチでした。80年代以降アメリカでは悪魔崇拝者による儀式が次々告発され、多くの人々がパニックと疑惑の渦に巻き込まれたと字幕に出ます。90年のミソネタ州ホイヤー。17歳のアンジェラ(エマ・ワトソン)は、父親ジョンを性的虐待で訴えた。捜査に当たった刑事ブルース(イーサン・ホーク)は心理学者レインズ教授に協力を要請します。ジョンの家は問題の多い家庭で彼自身アルコール依存症、妻は自殺、息子ロイは家族を嫌って家出した。ジョンは娘を虐待した事実は認めたが具体的な記憶を失っていた。教授は退行催眠術を用いて埋没している記憶を呼び起そうとした▼途切れ途切れにジョンが思い出したのは「娘に馬乗りした男が暴行している、俺は写真を撮っている、顔が見える、ジョージだ」。ジョージとは警官です。ブルースはジョージを収監する。アンジェラの聴取。アンジェラは事件が起きた部屋にジョージがいたこと、そして彼に下腹部にナイフで「しるし」をつけられたと証言し、ブルースに見せたが「あなたに見せたら私は殺される。あなたも殺される」と怯えた。警察に残っている報告書によって、FBIが7年半、悪魔崇拝者を追跡していた事実がわかる。アンジェラがブルースに打ち明けた内容は聞くもおぞましい。彼女の家の作業所に「数人の黒いフードを被った男が集まり黒ミサを行った。作業所のそこかしこに血が流れ、セックスや拷問が行われた。祭壇があり赤ん坊が連れてこられ、一人がナイフを取り出し赤ちゃんを斬り、全員が肉を食べ始めた。遺体は庭に埋めた」。ブルースは悪夢にうなされるようになる。無言電話がかかる。アンジェラの祖母ローズは二階から飛び降り重傷を負って入院した。アンジェラが言うには「無言電話は勧誘よ。仲間になれというの。人ごみに紛れて監視し、脅迫するの」▼しかし教授は言う。「アンジェラの診断書を見直した。腹部の傷は自傷の可能性がある。トラウマを受けた者が自分を信じさせるために演出することがあるのだ」。父親をさらに問い詰めると「ロイ(息子)はゲイで変質者は俺だ。子供たちにしたことを償うためには何でもする」。まあ、お父さん、娘だけでなく息子も虐待していたのね。ジョージは証拠不十分で釈放された。ある夜ブルースは自宅で男二人に襲撃された。格闘して覆面を剥ぐとジョージとその友達だ。このことは誰にも言わないからお前の知っていること全部吐け、とブルースは銃を突きつけた。それによって真相を知る。ブルースは教会に保護されているアンジェラを訪ねる。「君がどんな経験をしたかジョージが白状した。妊娠させられたのだろう。悪魔崇拝教団の儀式に赤ん坊が必要だからか」ブルースはメモを見ながら話しているが実は白紙だ。カマをかけたのだ。「君は家族を憎んでいたそうだね。全員負け犬で母はそのせいで自殺したと、寝物語でジョージに言ったのだろう。彼に駆け落ちを断られ君は人生を変える賭けに出た。警察に作り話をして父親を虐待犯にし、家族を厄介払いにしたかった」「誰があなたを信じる? 私に母の墓場でキスしたことをバラすわよ」。それくらい…でもアンジェラが未成年だからまずいのか。ブルースには彼女が「純粋な邪悪」に見えた▼悪魔崇拝団の存在は全国に広がり、アンジェラはテレビに出演「彼らの力は強大です。私が見た彼らは赤ん坊を殺して食べていました。遺体は敷地内に埋めました。皆さんに恐ろしい真実を話すことにしました」。ブルースは「アンジェラは本やテレビで茶番を思いついたのだ。我々もそれに巻き込まれた。FBIはもうとっくに追跡をやめている。拷問も写真も赤ん坊の犠牲も作られた話だ」。もちろん庭のどこからも遺体は出てこなかった。暴走するアンジェラはどうする。父親は言うのだ。「あの娘は放っておいてくれ。私は長年酒を飲み破滅的な生活を送っていた。家族を顧みず妻は力尽きたが、アンジェラは耐えた。あの子の憎しみは俺のせいだ。俺がしたことにして娘は見逃してくれ」。悪魔的儀式の虐待が行われた証拠は発見されず、記憶の退行を促す催眠療法は、虚偽の記憶を生むと現在は認識されている、と字幕に出る。つまりこの事件はアンジェラの嘘八百だったってこと▼「テシス 次に私が殺される」「オープン・ユア・アイズ」「アザーズ」で映画ファンを熱狂させたアメナーバルを思えば、ファンには物足りないに違いない。物語はけっこう込み入っているが、アメナーバルは中盤で犯人はアンジェラだと明らかにするのだ。よく見ていればわかります。それはともかく、ハーマイオニーからの脱却として、果敢に挑戦したエマの「純粋な邪悪」ぶりに一票。