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特集「頑張るドイツ映画と女性監督」

2019年6月22日

特集「頑張るドイツ映画と女性監督3」② 
スキャンダラス・クライム(下)(1996年 事実に基づく映画)

監督 ベルント・アイヒンガー

出演 ニーナ・ホス/マチュー・カリエール

シネマ365日 No.2883

「恥知らず? その通り」 

特集「頑張るドイツ映画と女性監督3」

ローズマリーの部屋を訪れる男たちは会社のトラブル、家庭の事情、取引の内容、何でも打ち明けた。「もう3年も妻と交渉がない。男としての私はどうなる。妻を殺してやりたい。君は私の支えだ、ローズマリー」。国の予算の何分の一かを生産する鉄鋼や車の企業家たちの裏が、あからさまに暴かれる。ローズマリーの野望は名実ともに上流社会におさまること。贅沢と名誉を一身に浴びること。婚約者がいるハルトークに結婚を迫った。「結婚して。どんな女にもなってみせる」「我々に未来はないよ。20万マルク出そう」「お金はけっこう」「30万マルク。ローズマリー、金を取れ。よく考えるのだ」。ハルトークはローズマリーがどんな女か嫌というほど知っている。家庭に入り夫を助ける女でもなければ、子供を育てる女でもない。せめて将来彼女が金に困らない措置を図ったつもりなのだが▼ハルトークに拒否されたローズマリーは、元カレ、トニーの安アパートに行く。「落ち込んでいるな。初めて見る君だよ。俺といろ。二人ならうまくいく。連中とお前は合わない。もう認めろよ」ローズマリーは静かに「行くわ」それを聞いて男も止めはしない。「ああ、わかっていたよ」。トニーはローズマリーに贅沢をさせられはしないが悪いやつではない。一緒になれば世間一般の幸せは得られるだろう。でも彼女の望む人生は慎ましさでもなく質素でもなくシンプルでもない。1957年1029日、ローズマリーは殺害された。犯人は不明だった。一時ドイツの経済界の集まりでは「君の噂ばかりだよ」とフリベール。「いずれおさまるわ」ローズマリーは恬淡としていた。自分の徒花のような性格をよく知っていた。社会秩序や常識、モラルとは水と油なのだ。金は自分が出しているのだからいうことをきけというハルトークに切り返したことがある。「私は物じゃない。あなたのバカな婚約者とは違う。彼女が大切ならなぜ私を囲うの。あなたのような男は妻がいても女を囲うのよ。女房が冷たいとグチり、自分が老いるのを恐れる。愛は永遠じゃない。確かなのはお金とセックスだけよ」「恥知らずな女だな」「その通り」。パーティで「お仕事は?」と訊かれたローズマリーは答える。「上流社会を相手に横になりますの」▼相変わらず貧乏暮しの母親へ、贈り物を持って帰り、「またね」そう言って去る姿は寂しそうだった。母親が開けてみると、見たこともない豪華な毛皮のコートだった。あれほど望んでいたゴージャスな暮らしを手に入れたが心は満たされない。彼女を受け入れる社会も、彼女の生き方を認める人物も、周りには見出せなかった。彼女は普通の女が束になっても叶わない、火花を発する激しい女性だった。ベルント・アイヒンガー監督は「薔薇の名前」「愛と精霊の家」「名もなきアフリカの地で」「素粒子」「バイオハザード」に制作として加わり、「パヒューム ある人殺しの物語」は脚本。ドイツ映画協会は功績を記念し2012年「ベルント・アイヒンガー賞」を創設した。2014年61歳で没。主演のニーナ・ホス、鮮烈のデビューでした。