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特集「頑張るドイツ映画と女性監督」

2019年6月24日

特集「頑張るドイツ映画と女性監督3」④ 
Who Am I ピエロがお前を嘲笑う(下)(2015年 犯罪映画)

監督 バラン・ボー・オダー

出演 トム・シリング/トリーヌ・ディルホルム

シネマ365日 No.2885

悪徳の男 

特集「頑張るドイツ映画と女性監督3」

ベンヤミンはロシアマフィアのハッカー集団「フレンズ」から逃れるため、正体を消し別人になる必要があった。目をつけたのが「フレンズ」を逮捕できず停職処分中のハンネでした。彼女の情報を洗い出し、過去に子供を亡くし子供が望めない体であることもつかみ、「このままでは僕は殺される」と泣き落としを演じる。ベンヤミンはMRXの正体を暴き、ハンネに教えてMRXと彼につながっていた「フレンズ」は一網打尽となり、ハンネはめでたく復職します。しかし話が出来すぎている。殺害されたはずの「クレイ」一味、マックスやシュテファンの死体は発見されない。疑問を持ったハンネはベンヤミンの過去を遡り多重人格であることを突き止めた。彼は一人で4役に成り代わっていたのだ▼「何もかも打ち明けたのになぜ釈放されない、奴らに殺される」と嘆くベンヤミンに同情したハンネは「証人保護はコンピュータープロムラミングよ」と教え、5分の猶予をやる。ハッキングして新たな身分を作れということです。「あなたはまた停職になるのでは」と心配するベンヤミンに「ユーロポールの目的はロシアのハッカー集団であって、あなたは小物よ。脱走したことにするわ」。ベンヤミンを逃すとき「最後に一つ教えて。角砂糖の種明かしは何なの」。ベンヤミンは両手の手のひらを広げ、器用に右から左に角砂糖を移動させ「あったはずのものがない」と思わせるのは「人は自分がみたがるものしか見ないからだ」と言って姿を消す。ハンネはハッとし、やがて微笑を浮かべた。ベンヤミン、マックス、シュテファン、パウル、新しく仲間になったマリがドイツを去る船のデッキにいた。彼らはれっきとして実在した。ロシアマフィアに狙われ「どうしよう、どうしよう」とうろたえるベンヤミンから訳を聞いたマックスたちは「仲間だろ。見捨てやしない」と力強く励まし、キレ者のマリが「あなたの母親は解離性性同一障害だった。あなたも遺伝性精神疾患で多重人格を」演じろとリードしたのだ▼この映画は急転直下「スタンド・バイ・ミー」もどきとなって終わります。友情も立派な物語の核ですからそれはそれでいいのですが、彼らが新天地に行ったところで地道に額に汗して糧を得るとは思えない。同じことをしていつか刑務所行きでしょう。一言で言うと「物足りなさ」の正体は、主人公が小粒で迫力に欠けることだったのです。ハッカーオタクが大一番のハッキングにドジ踏んで追われる身となり、一芝居打って逃れた。自分が脱走したところでハンネに害は及ばない、という筋書きでやってのけたことがベンヤミンの良心でした。でもラストシーンのベンヤミンが髪をショートの金髪にし、黒いコートを着て波濤を見る姿には、社会の暗がりにいた気の弱い青年から、一回り骨太になった「悪徳の男」を感じさせました。ハリウッドでリメイクするそうですから、たぶんベンヤミンが隠し持つ(はずの)悪の部分を思い切り誇張するでしょう。「クレイ」とは

Clowns Lough At You

の「CLAY」。「人は本当の現実ではなく、自分が見たいものしか見ない」とはシーザーの言葉です。塩野七生さんが「ローマ人の物語」にしばしば引用しています。

 

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