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特集「頑張るドイツ映画と女性監督」

2019年6月27日

特集「頑張るドイツ映画と女性監督3」⑦ 
ハイジ アルプスの物語(2017年 文芸映画)

監督 アラン・グスポーナー

出演 アヌーク・シュテフェン/ブルーノ・ガンツ

シネマ365日 No.2888

旅人たち 

特集「頑張るドイツ映画と女性監督3」

ヨハンナ・シュピリ「アルプスの少女ハイジ」の実写版。キビキビ作ってあります。ドイツ語圏であるなしを問わず、この作品が世界中で愛されるのは「ハリポタ」とはまた違う理由がある。いくつになろうと、男でも女でも、どこの国の住人であろうと、人はアイデンティティを求め確かめるために旅する旅人だ。映画はハイジを通してその主張をはっきり描きます。ハイジ(アヌーク・シュテフェン)は8歳にして両親に死に別れ、デーテ叔母と一緒に暮らしてきた。デーテというのが「嫌われ女子」の筆頭です。綺麗な服を着て大きな家に住み(たとえ身分は使用人でも)、手を汚さず、汗水たらさず暮らす生活に憧れ、そのためにはハイジが邪魔だ。たった一人の身内である祖父のアルムに押し付けに来た。彼は偏屈で人間嫌い。追い返そうとするがデーテは強引に押し付けていく▼アルムは思慮深いハイジが気に入り、受け入れを了解した印にハイジの木の椅子を作ってやる。二人は仲良く向かいあって食事する。アルムが作ったチーズを串に刺し、あぶって食べるのは最高だ。ペーターという山羊飼いの少年とも友達になる。ペーターのおばあさんは目が見えない。歯も悪くて黒パンが噛めない。ハイジはおばあさんに柔らかい白パンを食べさせてあげたい。アルムとハイジの幸せを叔母がぶち壊す。フランクフルトの良家のお嬢さんが友達を探しているからハイジを連れて行くといい、アルムの隙を狙って誘拐同様に汽車に乗る。豪邸には美少女クララがいた。母親が死んでから足が立たなくなって車椅子だ。教育係のロッテンマイヤーが叔母と双璧をなす「嫌われ女子」。箸の上げ下ろしまで文句を言い、読み書きができないと見下す。当主ゼーゼマンが長い出張から母親を伴って帰郷した。この時とばかりハイジをこき下ろすロッテンマイヤーに「堅苦しいことを言わないの。私が会ってみましょう」ハイジはこのお祖母様がすっかり好きになる。もともと頭のいい子だからたちまち読み書きを覚えクララは感激する。ひとりぼっちだったクララは「ハイジ、どこにもいかないでね」とすがりつくように頼む。行動力のあるハイジが、ストレスのあまり夢遊病を発症するまで屋敷で我慢したのは、クララを悲しませたくなかったからだ。当主の友人でもある医師の診断は「心の病気だ。山に帰せ」▼クララは悲しみに泣き叫ぶ。テーブルの食器、皿、グラス、手の届くもの全てを床に払い落とし、「嫌いよ、ハイジ。出て行って!」。アルムは帰ってきた孫を抱きしめハイジの目の前には雄大なアルプスの峰が広がった。手紙を書く。「毎日クララのことを考えます。私の夢はクララが山に来てくれることです」。ある日、アルムは不思議な一行が登ってくるのを見た。台に乗ったクララとお祖母様だ。気難しいアルムがお祖母様とは気があった。ワインを酌み交わし「しばらくクララをお願いできますか」アルムは快く引き受ける。銀の食器もスープもないが、しぼりたての山羊の乳、作りたてのチーズ、新鮮な空気があった。ハイジの真似をしてミルクの残った木の皿をなめ、チーズにかぶりつき、クララは楽しくてたまらない▼全然楽しくない奴が一人いた。ペーターだ。ハイジがクララにかまってばかりで面白くない。ブンむくれた彼は、クララの車椅子を谷に突き落としてしまう。移動できなくなったクララは座ったまま、自分の足に止まった蝶に触れようとした。蝶がヒラヒラと舞い上がり、クララは蝶を追って手を伸ばした。ハイジが叫ぶ「クララが立っている」。ペーターは奇跡の大恩人となる。迎えに来たお祖母様はハイジに本を一冊与えた。中は真っ白だ。「あなたが自分で書くのよ」「みんなが笑うわ」「楽しいと思えることは誰がなんと言おうとやらなきゃだめ」。ハイジは将来の希望を作家と答える。ハイジとクララの少女二人、嫌われ女子、聡明なお祖母様、孫を愛する頑固で心やさしいアルム、素朴な山羊飼いの少年ペーター。牧歌的な情景がある一方、馬車ごと邸内に入れる富豪の屋敷と黒パンをかじる村人の貧富の差、無責任な噂が広まる狭い社会、「判断するのは自分だ」アルムの寸鉄人を刺す示唆にアイデンティティを確立してゆくハイジ。人物のキャラ造詣のメリハリが効く。アルムを演じたのはドイツの名優、ブルーノ・ガンツ。「手紙は憶えている」「リスボンに誘われて」「ヒトラー最期の12日間」などの代表作があります。