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特集「頑張るドイツ映画と女性監督」

2019年6月30日

特集「頑張るドイツ映画と女性監督3」⑩
ヒトラーを欺いた黄色い星 (2018年 事実に基づく映画)

監督 クラウス・レーフレ

出演 マックス・マウフ/アリス・ドワイヤー

シネマ365日 No.2891

見えない人々

特集「頑張るドイツ映画と女性監督3」

Die Unsichtbaren(見えない人々)が原題であり本作の核心です。見えない、あるいは存在しない人々とは、ベルリンの7000人のユダヤ人がナチの手を逃れて潜伏した、彼らは「見えない人々」だったけど、間違ったことをしている国家に対し、正義と信念と良心を守り、死と隣り合わせになりながらユダヤ人を救った無名の市民たちもまた「見えない人々」だった。生還したのは1500人。そのうち4人の証言による映画です。彼らは当時16歳から20歳だった。ツィオマ・シェーンハウスは当時20歳。「機関銃工場で武器を製造する技術がある」と偽り移送を免れた。両親とは生き別れだ。ルート・グンベル20歳。医師である父を恩人と感謝するドイツ人が匿ってくれたが、4人家族と兄の許嫁、その母となると大世帯なので一つの家では収容できず分散し、誰がどこにいるかもわからなくなったオイゲン・フリーデは16歳。ドイツ人の義父の手配で潜伏先にバスで向かう。特別許可証を見せたが「ユダヤ人が座っていいとは書いていない」と立たされる。老婦人がそっとタバコをくれた。「たぶん国家への抗議の姿勢を示してくれたのだ」とオイゲンは回顧する。ハンニは17歳。孤児。母の友人の家に引き取られ、秘密警察の乱入をやり過ごし脱出した。母の親友のキリスト教徒の庇護を受ける。明日はどうなるか考えもしなかった。彼らはヒトラーを欺く余裕はなかった。その日を生き延びることで精一杯だった。ツィオマは身分証を偽造して同胞を助ける。彼に偽造を斡旋したのは会計検査院の高等参事官、反ナチのカウフマンだった。ハンニは親友エレンとドイツ人高官ヴェーレン邸でメイドとして働く。彼は彼女らがユダヤ人と知りながら雇ってくれた。ツィオマは偽造で大儲けし、中古のヨットまで買えたが密告によって正体がばれ、カウフマンが「探してくれた潜伏先はヘレーネ・ヤーコプスの家」だった▼ハンニは髪を金髪に染め別人になる。映画館が格好の隠れ場で毎日通っているうち、三日後に戦地に赴く青年が「母の話し相手になってくれ」と頼む。母親は映画館の窓口係で、毎日来るハンニの顔を覚えていた。彼女(コルツァー夫人)を訪ね「私はユダヤ人。行くところがないのです」「ここにいたらいいわ。人に聞かれたら私の姉の娘だと言って」。コルツァー夫妻の生活は質素で食べ物も満足にない時に受け入れてくれたのだ。ハンニは実の母と娘のようにコルツァー夫人と心を通わせる。作り上げた身分証の入ったカバンを置き忘れるなど、ドジも踏んだツィオマだが、大胆にも自転車で国境を越えスイスに越境した。収容所を脱走したヴェルナー夫婦は実態を話した。「みな殺しだ。ガスで殺すのだ。たぶん何百万人になるだろう」「すべてを奪った上に殺すのか。でも、なぜ?」当時収容所の役割は極秘だった。誰も生きて帰ってこないことだけはわかったが真相は闇だった。一人がこう答えている。「ナチスの世界観によるとこの世の悪はすべてユダヤ人が原因らしい。だから彼らは全員殺さなければならないと考えている」。こんな狂気を生き延びた4人の一人ルートは結婚しアメリカに渡った。「私たちを助けてくれた人のことを、名前を挙げて話している。大抵は誰も彼らのことを知らないだろうから。違うドイツ人もいたことを知ってほしい」。ヘレーネ・ヤーコプスは「なぜ彼らを助けたのか」という質問に「私は祖国を助けたかったの」。一人を救う者は世界を救う。彼女のしたことがそれだった。国が間違ったことをしているとき、自分を見失わず正しいことをして「国家を助けたかったの」。自分たちが運営する動物園に300人のユダヤ人を匿い、終戦まで守り抜いたドイツ人のジャビンスキー夫妻の実話は「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」として映画化された。こういう「見えない人々」こそ、人間の尊厳を示す真の主人公たり得るのではないか。安易な「ヒトラー」の邦題はいい加減にしてほしい。

 

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