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特集「異形の美術館」

2019年7月3日

特集「異形の美術館」③
フランケンシュタインの逆襲(1957年 ホラー映画)

監督 テレンス・フィッシャー

出演 ピーター・カッシング/クリストファー・リー/ヘイゼル・コート

シネマ365日 No.2894

闇の発露

特集「異形の美術館」

異形の名優、ピーター・カッシング第三弾。カッシングは44歳でした。戦後ハリウッドに押され翳りの見えたホラーの老舗ハマー・フィルム・プロが本作の大ヒットで盛り返した。フランケンシュタイン男爵(ピーター・カッシング)は、15歳で家督を相続した金持ちの息子。湯水のごとく遺産をつぎ込んで生命を創生するという、神をも恐れぬ研究に没頭している。長年彼の家庭教師であるポールとともに未知の冒険に挑んだ。死んだ子犬の蘇生に成功したものの、フランケンシュタインは「学会で発表しよう」というポールの意見を無視。「我々は生命の源を発見した。さらに進んで命を創造するのだ。無から有を生み出す。手足、臓器などを集め完璧な肉体、天才の頭脳を持つ人間を作り上げる。先週、凶悪な強盗が絞首刑にされ死体が腐るまで吊るされている。それを盗む」▼真夜中、フランケンシュタインは絞首台に登って死体を外し、研究室に持ち帰って首を切り落としボディを確保する。「やはり強盗だな。不細工な手だ。まるでゴリラだ」そう呟くフランケンシュタインをポールはおぞましげに見やる。彼は「世界有数の彫刻家の手を、ライプチヒで入手した。金を積んだのさ。美しい手だ」。この実験はもうよせ、とポールは止めるが耳も貸さない。次は「天才的な頭脳が要る」。教授を屋敷に招き、二階から突き落とし殺してしまう。ポールはフランケンシュタインの従妹エリザベス(ヘイゼル・コート)に一刻も早く家を出るように忠告するが、彼女はとどまる。雷鳴の轟く夜、何やら複雑な実験装置にエネルギーが通じ、死体が動き出す。とんでもない怪力で危うくフランケンシュタインは殺されかけるが、ポールが目を撃ち抜く。「死んだぞ」とポール。「また命をやるぞ」とフランケンシュタイン。懲りない人なのね▼フランケンシュタインとは冷酷なエゴイストで、メイドのジャスティンを妊娠させ、結婚を迫る女性に「君が男爵家の妻に?」と冷笑する。「あなたが研究室で何をしているか警察に喋るわよ」と彼女は脅すが、ぱったり姿を消した。訝るエリザベスに「大方、村の男と駆け落ちでもしたのさ」多分研究室の硫酸の中でしょうね。ポールはある夜、第二のクリーチャーを見ることになる。これがクリストファー・リーです。無名時代だったとはいえ、ベタ塗りのメイク、頭の半分禿げたカツラ、男前のリーは原型をとどめていません。鎖に繋がれ、マリオネットのようにぎこちない手足の動き。「こっちへ来い。座れ」フランケンシュタインは傲慢に命令する。クリーチャーは従順に長い手足を折って床に座る。ポールが痛ましげに「これが君の言う高度な知性と天才の頭脳と完全無欠な人間か」「こうなったのは君のせいだ。せっかく入れた脳を君が傷つけた。脳の手術を続け何度でも入れ替える」失敗は人のせい、脳を入れ替えるとはまた人を殺すのか。度し難い男です。カッシングが演じると、削げた頬、青い瞳、筋の通った鼻、薄い唇の整い方が、冷酷さをいや増す▼本作は倒叙法でして、冒頭フランケンシュタイン男爵は牢獄に繋がれています。村で生じた殺人事件の犯人とされた。「違う、あれはクリーチャーがやったことで私ではない」。面会に来たポールに「君が知っている本当のことを話してくれ。あと1時間で僕は死刑なのだ」懇願するがポールは黙って出て行く。このシーンの少し前に、クリーチャーはフランケンシュタインに撃たれ、炎に包まれ最期を遂げています。ポールにしたら、フランケンシュタインを生かしておいたらどんな怪物をまた作り出すかしれない、死なせた方がいいと判断したのでしょう。フランケンシュタインこそが本当の怪物であって、彼の魂はこの世ならぬ魔界に魅了されている。そこは人間に許されぬ場所。事もなげに命を創造するなど神を恐れぬ冒涜です。しかし、原作者のメアリ・シェリーはこの本を書く前、生まれたばかりの子供を亡くしています。あの子にもう一度命を与えられたら、という願いがなかったとは言えない。しかし現実に彼女が生み出したのはマッディスト・サイエンティストと異形のクリーチャーでした。それが彼女の抱えていた「闇」の発露だったかもしれません。