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特集「ベストコレクション」

2019年7月9日

特集「真夏の星の交響曲 7月のベストコレクション」②
ミスター・ガラス(2019年 スリラー映画)

監督 M・ナイト・シャラマン

出演 ジェームズ・マカヴォイ/ブルース・ウィリス/サラ・ポールソン/サミュエル・L・ジャクソン

シネマ365日 No.2900

信じられないですが… 

特集「真夏の星の交響曲 7月のベストコレクション」

アンブレイカブル」「スプリット」に続くスーパーヒーロー三部作完結編。精神分析医エリー(サラ・ポールソン)が特殊な能力を持つ三人の男性を治療することになった。不死身の肉体と罪を感知する力を持つデヴィッド(ブルース・ウィリス)、24の多重人格者ケヴィン(ジェームズ・マカヴォイ)、非凡な知能と骨折しやすい体を持つミスター・ガラスことイライジャ(サミュエル・L・ジャクソン)。デヴィッドとケヴィンは街で起こした騒乱のため施設に収容される。そこにはイライジャが監禁されていた。エリー医師は「あなたたちが自分を超人だと思うのは極度のストレスと抑圧の後遺症で、治療が可能」と告げるが誰も信じない。部屋を抜け出したイライジャはケヴィンの元にいき、彼の人格の中のビーストを呼び出すと、フィラデルフィアでオープンする超高層ビルで、デヴィッドと決闘し、彼ら「超人」の能力を世界に知らしめることを提案した▼ナイト・シャラマンの込み入った重層構造も、三作目になると先が読めてしまうのが難ですが、ジェームズ・マカヴォイが24人格のうち数人分、特にメインヴィランのビースト、バリー(“照明”=支配権のようなもの=を管理する人物)、9歳の男の子らを入れ替わって演じているのが刺激的だ。イライジャは相変わらず策略の塊。エリー医師の真の目的を読み、逆に罠にはめてしまう。彼女は「アンチ超人」組織から派遣されたメンバーの一人だ。その組織とは、社会が平穏を維持する最大の条件は均衡であり、超人などがいると秩序とバランスが崩れる、彼らが能力を顕現して厄介をしでかさないうちに、殺すか治療して凡人に戻すか、の活動を行っている。イライジャは部屋に来た施設のスタッフの喉を掻き切るとビーストを連れて逃亡する。デヴィッドはエリー医師に洗脳されそうになるが、自分の特異性を信じて力を取り戻し、鉄のドアをへこませて脱出する▼施設の外で三人は揃うが、早くも組織の「超能力者処置斑」が待機し、ビーストは射殺、デヴィッドは溺死、ビーストは、イライジャが列車事故の犯人であり、その列車に乗っていた父親を亡くしたために、虐待のトラウマによるサイコ人生に自分を陥れた憎むべき男だとわかり、一撃で彼の骨をバラバラにしてしまう。三人は葬られた。エリー医師が報道陣に「事件は精神を病んでいる3人によって引き起こされたのは明らか。患者のプライバシー保護のため事件は内密に」と要請していたが、組織のメンバーばかりの会合では「3人は本物の能力を持ち、相当なスキルだった。目撃者はゼロ。任務は承知しています。まず対象人物の説得。もっとも人道的で効果的な方法です。私たちは処刑人とは違う。犠牲は望まない。この活動の目的は社会の均衡を維持し秩序を守ること」。特殊な能力が突出している人間は、社会に混乱をもたらすから始末するという、トンデモ思想ですが、死を予知したイライジャは施設中のカメラを逆手にとって、三人の存在を映像に残しネットに乗せる▼映像の中で彼はこう解説する。「謎の勢力が我々の真の能力を知らせまいとしている。偉大な能力が実在するかもしれないという思いを否定している。己の才能を全面的に受け入れる者たちの姿を公開すれば目覚める者が、自分の力を信じる人間が現れるだろう。ヒーローになることを互いに許そう。でなければ覚醒は訪れない」。誰でも自分を信じればヒーローになれる、とそこまで単純化していないが、ある種の能力は反社会的と見られ世間に適合しない場合もある、突出した存在や特殊性を否定する見方があるのも事実だ。しかしながら自分たちの存在を繰り返し、偉大な能力であると吹き鳴らし、挙げ句の果ては、彼らの超能力を知らしめることによって「宇宙の真実を学ぶ時が訪れた」と結論しているのはどう考えても大げさすぎる。殺人者とサイコ男が特別な能力を持つゆえに偉大な存在なら、社会不適合を自覚しながら、自分の生きる場を求めて悪戦苦闘しているまともなマイノリティはどうしてくれるのだ。突出した能力者を世間の反乱者とみなす、アンチ・ニーチェを降りかざす「均等的思想」もダサイが、犯罪者を「宇宙の真実」にまで持ち上げるか。シャラマンの映画では信じられないことですが寝落ちしかけた。

 

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