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特集「ベストコレクション」

2019年7月14日

特集「真夏の星の交響曲 7月のベストコレクション」⑦
女王陛下のお気に入り(上)(2019年 史実に基づく映画)

監督 ヨルゴス・ランティモス

出演 オリヴィア・コールマン/レイチェル・ワイズ/エマ・ストーン

シネマ365日 No.2905

私をむさぼり食わないで 

特集「真夏の星の交響曲 7月のベストコレクション」

三人の女性が主人公です。18世紀イングランド、アン女王統治下の宮殿。英国はフランスとスペイン継承戦争のさなか。アン女王(オリヴィア・コールマン)は側近の女官サラ(レイチェル・ワイズ)を呼び、宮殿の模型を見せる。「あなた、気が変よ。私に宮殿を下さろうと? 戦時下なのに浪費が過ぎる」「勝ったのよ」「まだ続いています」「知らなかった」。サラはアンの幼馴染だ。サラが女王に代わる権力を持つに至ったのは、個人的な関係の親密さもさることながら、彼女の実務処理、閣僚人事、特に野党への布石、国家財政のマネジメントに出色の能力を備えていたからだ。彼女と女王は長らく助け合ってきた。いつしか寝室で愛の行為を持つようになったが、それだけでサラが女王のお気に入りになったわけではない。まごうかたなき切れ者だったからだ▼女王のメーク一つにもサラはチェックを入れる。「なに、それ。アナグマみたいよ。部屋に戻って」チャチャッと手直し。次は女王陛下の痛風。上を下への大騒ぎの挙句やっと眠る。次女が一人入ってきた。痛風の足に薬草を塗る。これがアビゲイル(エマ・ストーン)だ。没落貴族の娘で娼婦にまで身を落とし、従姉であるサラを頼って宮殿に来た中途採用である。無断で入室したとサラはムチ打ち6回を命じるが、女王の痛みが引いてきたと知り中止させた。彼女の指示は迅速で厳しい。大抵の案件は廊下を早足で歩きながら処理する。「伯爵、泣き言はやめて。心臓を叩き潰してやる」「トウネル夫人。織物の予算を認めます。超過したらあなたの爪を剥がします」。野党の代表ハーリーは戦争終結派だ。サラは違う。「戦争は勝利を重ねてこそ講和に有利。今は攻める時。経費の補填は土地の税金を倍に上げて」敵もつくりやすいやり方ですね。舞踏会で夫と仲良く踊っていたサラに嫉妬した女王は「やめい!」と叫び車椅子で引き上げる。風の如く追ってきたサラが「ごめんなさい、アン」女王はサラの頬をひっぱたく。「いいのよ、叩いても。走っていく?」女王は嬉しげに頷く。車椅子が寝所へまっしぐら。豪華な部屋には図書が天井までぎっしり。アビゲイルがはしごに登って本を探していた。つゆ知らず戻って来たサラと女王は熱いキスを交わしベッドに。(あンら、まあ)…アビゲイルは女王とサラの秘密を握る▼アビゲイルこそ最高の悪役です。情報をチョイ出しにしたり密告したり、せこい真似はしない。女王さえ操れば地位も名誉も財産もごっそり。どうやって女王をたぶらかしたかというとウサギだ。17人の子を亡くした女王は17羽のウサギを飼っている。サラは気持ち悪がって相手にしなかったが、アビゲイルは「可愛い」と抱き上げる。女王は気を許し、子供を得られなかった寂しさを漏らす。アビゲイルは賢い。図々しく甘えず、距離を保ってやさしく女王に接する。公務でキリキリ舞いしているサラは女王ばかりにかまっておれない。侍従が飛んできて「陛下が飛び降りようと…」。サラは女王を窓際から引きずり下ろす。「サラ、そばにいて。仕事は休んで」「誰かが仕切らねば。アン、私をむさぼり食わないで」「むさぼり食う? おいしそう、刺激的で、焼いたら最高の一皿よ」。ヨルゴス・ランティモス監督はある箇所はユーモラスに、ある箇所は思い切り下品に、時代が変わっても地位があってもなくても、欲望と野心に変わりはない人間の裏面をヒン剥いていきます。

 

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