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特集「ナンセンスは素敵だ」

2019年8月8日

特集「ナンセンスは素敵だ4」①
世界でいちばんのイチゴミルクのつくりかた(2017年 ファンタジー映画)

監督 ファイト・ヘルマー

出演 ノラ・ボーネル他子役5人とハナグマ

シネマ365日 No.2930

楽しいナンセンス

特集「ナンセンスは素敵だⅣ」

 ボラースドルフ村はドイツのド真ん中にある、ゆえにヨーロッパの中心であり世界のおヘソと言われている、ゆえに統計的にみて同村はヨーロッパの典型であり100%フツーである、ゆえに新製品を実験するためのモニター村となり、消費者調査会社「銀色団」が来た、というオープニングだ。彼らが言うには「皆さんが青いバナナの房を気に入れば世界がそれを食べるのです」。彼らは村に本社を建て毎日CMを流した。彼らの本音は「フツー」イコール「凡人」の同義語で、なんとでも操れるという魂胆だ。村の住人はスーパーに置く、100%有機廃棄物の実験台に等しい。ところが昔気質のお爺ちゃん、お婆ちゃんが言い出した。「こんなものクソだ」「パスタはまるで針金よ」。「ヨーグルトに青いバター、もう最低の気分」。でも「銀色団」は完全に村の支配者となり、変わった動物も「ペット禁止」にした。ところが村の4歳児の仲良しグループの親友はハナグマのクアッチだから猛反発。レジスタンス活動を策定する。銀色団はうるさいことを言うお年寄りを施設に収容することにした▼彼らの孫はみな、お爺ちゃんとお婆ちゃんが大好きだ。ベンは消防士になりたい、リーケ(ノラ・ボーネル)はクレーンが大好き。フリーダお婆ちゃんはクレーンよりもっと好き。マックスは清掃車の専門家。レネは機関車が好きで客車は嫌い。スーゼは音楽家。パン屋のポールは船長になるのが夢。ハナグマのクアッチの大好物はイチゴミルクだ。ジュリエッタお婆ちゃんは凄腕のパイロットだった。世界中の名所を飛び回った。エッフェル塔にもブンランデルブルグ門にもナイアガラの滝にも。1931年ピサの塔を一周して以来塔が傾き「ピサの斜塔」と呼ばれるようになった…ナンセンスが世界史レベルであるのが楽しい。リーケのお婆ちゃんは片足ホップでエベレストに登った初めての成功者。マックスのお爺ちゃんはロケット・カーの発明者。ポールのお爺ちゃんは亡くなったので、グスタフさんをお爺ちゃんと呼ぶ。グスタフさんは潜水艦を最初に造った人だ。ベンのお爺ちゃんはデザートだけメニューの開発者。スーゼのお爺ちゃんは変わった楽器の専門家。バイオリンの代わりにポットやドライヤーを使い「狼のアリア」を世界中で演奏した▼銀色団を追い出そう。この村で世界記録を作ればもう「フツー」じゃなくなるから銀色団は出て行く。そう考えた子供たちは「パン配達マシーン」「牛のおならで電気を起こす」「鉄・木・プラスチックを分別し、鉄で最高級子供自転車を作る」「風力エンジンで省エネ」などにチャレンジするが子供たちの力では限界がある。作ったマシーンはことごとく失敗。あおりを食って村は嵐が通過したような惨状に陥る。親たちは睡眠薬で眠らしていた。話を聞いたお爺ちゃんとお婆ちゃんは泰然自若。「大人が起きてくるまでに直しちゃえばいい」。彼らは修理するだけでなく子供たちが計画した様々な機械(パンの各戸自動配達マシーンなど)を作り上げた。コツコツと一人(?)で作業していたクアッチは風車やミキサー車を使ってイチゴミルク製造機を完成。審査員が来てクアッチのイチゴミルクを世界一に認定しマスコミが大きく取り上げます。それでも抵抗する銀色団はイチゴミルクのプールに投げ込まれました。大人たちは自分の親や子供の能力を見直し、フツーじゃないことの良さに気づきます。クアッチは給水塔に住み、反省した大人はクアッチにお嫁さんを連れてきました…ナンセンス極まる展開がまことしやかに収拾されていくプロセスがお見事。この映画はお年寄りと子供という、社会的弱者がアイデンティティを証明するお話。やりたい放題の銀色団が社会のマジョリティの総称だとすれば構図がよくわかります。「マーズ・アタック」に通じるものがあります。