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特集「ナンセンスは素敵だ」

2019年8月14日

特集「ナンセンスは素敵だ4」⑦
アンデッド/ブラインド 不死身の少女と盲目の少年(2019年 ホラー映画)

監督 ジャスティン・P・ラング

出演 ナディア・アレクサンダー/トビー・ニコルズ

シネマ365日 No.2936

暗黒メルヘンなの? 

特集「ナンセンスは素敵だ4」

 この映画、どう見ろというの? 母親の情夫にレイプされかけた少女ミーナ(ナディア・アレクサンダー)は、抵抗したら男にスノードームで殴られ、死んだみたいだった。男はミーナを森に埋めた。ミーナは蘇り傷口はぱっくり口を開け、恐ろしい形相。彼女は人間の死体を貪る獣人となっていた。これがお話の一つ。もう一つは殺人犯に誘拐された少年アレックス(トビー・ニコルズ)とミーナの出会い。アレックスは心身ともに男に虐待され、異常に恐れている。ニーナはとっくにその男を殺し、あいつは死んだから大丈夫だと繰り返し言い聞かせてやっと落ち着かせる。アレックスの捜索には賞金がかけられ、3人の男が追跡に来たが、ミーナに殺される。「僕も殺すの?」とアレックスは訊くが、ミーナは少年を守ってやる。言い忘れたが、アレックスは無残に両目を潰され、ミーナの顔形は見えないのだ▼少年もミーナを頼り、二人は助け合い、たどり着いた森の一軒家で、ミーナをいぶかしんだ中年女性が銃を向けると、アレックスが背後からぐっさり。その女性には娘がいて一人住まいの母親を訪ねてくる。ミーナは部屋を物色し自分にあったセーターや服を選び着替えていた。娘は母親の死体とアレックスに気づき、警察に連絡。アレックスを安全な場所に移送しようと車を出す。荷台にはミーナが潜んでいる。アレックスはミーナがいないため恐怖に陥り、ハンドルに触れて車は横転。アレックスと女性は命に別条ないと見たミーナは森に消える。警察はアレックスを救急車に乗せるが、彼は狂ったように「ミーナ、ミーナ」と叫ぶ。その頃、一人で山道を歩いているミーナに車の女性が「一人歩きは物騒だから乗りなさい。どこまで?」と親切に声をかける。礼を述べて車に乗るミーナの顔形は元の可愛らしい少女に戻っているのだ。さっぱりわからん▼人肉をくらい、人間の食べ物を口に入れると吐き出していたミーナが、少年と触れ合うことで痛みも味覚も取り戻す。ミーナは母親も殺してしまう殺人鬼ですが、少年にすがりつかれるとあっさり人の心を取り戻す。男に頼られるとイヤと言えないタイプね。ヘタレ男で苦労するわよ。それはいいとして獣みたいな面相がかき消えたのはどういうこと? これまた心の変化によって顔までまともになったってこと? もう少し合点のいくサディッションがあってしかるべきだわ。「本当は怖いグリム童話」のノリなのだけど、本当に怖いのは取り戻しようのないくらい破壊された人の心であり、不治の病のような意地悪さなのよ。アメリカの詩人アン・セックストンは「魔女の語るグリム童話替え話」で、残酷な転換をやってのける。水田宗子氏の名訳がある。「いばら姫(眠れる森の美女)」はこうだ。「ちょっと想像してご覧なさい/うとうとしている娘/干からびた人参みたいにだらりと両腕をたらし/催眠術の誘う眠りへ/精霊の世界へ深く/おちていく娘/上手にお話しながら/この娘 タイムマシンに引っかかってしまったのだ/突如として指舐めている二歳児に逆戻り/蝸牛みたいに自閉してしまい/もう一度口をきく訓練をし直さなきゃならない」▼この残酷な読み替えに比べたら本作はもろ、おとぎ話よ。そうか、暗黒メルヘンとしてごらんなさいってことか。少年は救助され、少女は社会復帰しハッピーだろって? ちょっと待って。次々人を殺さなければ成り立たない暗黒メルヘンなんか何が面白い。ムード作りはうまかっただけに、再生する少女の内面をただの「頼られ姉さん」で終わらせたのは早急だったわ。