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特集「ベストコレクション」

2019年8月26日

特集「秋の気配は映画日和/8月のベストコレクション」⑤
ある女流作家の罪と罰(上)(2018年 事実に基づく映画)

監督 マリエル・ヘラー

出演 メリッサ・マッカーシー/リチャード・E・グラント/ドリー・ウェルズ

シネマ365日 No.2948

これは創作なの 

特集「秋の気配は映画日和/8月のベストコレクション」

 リーというヒロインがもともと人好きしないのね。過去には有名人の伝記作家としてベストセラーも出したが、エステ・ローダーの伝記を巡り、本人や出版社と衝突、業界からつまはじきにされ落ち目をたどり、家賃は滞納、飼い猫の治療代にも事欠き酒浸りの日々。エージェントのマージョリーは訪ねてきたリーを追い払おうとしたが「仕事がほしい、菓子箱のコピーでもなんでも書く」と食い下がる彼女に「人あたりをよくして清潔な服を着る。お酒をやめて言葉遣いを改める。あなたが企画しているというファニー・ブライスの伝記に前金は出せない。別の仕事を探しなさい」。困窮したリーはキャサリン・ヘプバーンの手紙を売ることにした。持ち込んだ本屋の店主アンナ(ドリー・ウェルズ)は「こんな大事なものを手放すの? ケイトの手紙は無愛想なものが多いけど、これは温かいわ」リーにすれば有難いお金になった▼ニューヨーク公共図書館でファニー・ブライスの資料を調べていたリーは館蔵本に忘れられていたファニー本人の手紙2通を偶然入手する。1通をアンナの書店に持っていくと75ドルで買ってくれた。「特別な何かが書いてあれば高く売れるのよ」と聞いて、2通目に「追伸」とし、自分のタイプで「孫が生まれたけど鼻が私そっくり。整形代を残すべき?」と書き加えた。ブライスの伝記を調べているから捏造はお手の物だ。アンナは「追伸に価値がある」と喜び、350ドルで買い受けた。猫の治療費を払い、診察を受け、部屋代を清算し、家主は一挙に愛想よくなる。お金があるっていいことだ。リーは有名作家の偽手紙を量産することにした。ノエル・カワードはこうだ。「親愛なビリー。マレーネの到着を祝う会はご辞退申し上げる。あの抜け目のないドイツ人は大事な友だ。老いる自分の姿を嘆き愚痴ばかりこぼしているが、時の翁の洗礼をまぬがれた史上初の美女だ」。贋作手紙とはいえいかにも作家の書く「書きぶり」が面白かった。偽サインも練習してものにした。バーでムショ帰りのジャック(リチャード・E・グラント)と出会ったリーは「ケチな仕事をしなくても稼げる方法を見つけた」「どんな?」「偶然やったことが犯罪だった。文書の創作よ。著名作家の手紙よ。収集価値のある文芸作品の世界があるの。蒐集家に売るのよ」。リーはここで「文書の創作」と言っています。贋作ではなく、自分が作家に成り代わって、ある一場面を創作するのである。詐欺ですがリーには創作でした。いわば「偽手紙書き作家」に彼女は想像力と書く能力を注ぎ込んでいきます。

 

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