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特集「刑事コロンボと9人の女優」

2019年9月2日

特集「刑事コロンボと9人の女優」②スーザン・クラーク
もう一つの鍵(1973年 テレビ映画)

監督 ノーマン・ロイド

出演 ピーター・フォーク/スーザン・クラーク

シネマ365日 No.2955

幼くてサイコな女 

特集「刑事コロンボと9人の女優」

 「エデンの東」女子版の趣があります。兄ばかり可愛がる父親の愛を得ようと、こっそり豆畑を栽培し大儲けをして、さあお父さん見てくれと父に差し出す、寂しがりで繊細な次男がいました。本作のヒロイン、ベスも、母は兄の肩ばかり持つとひねくれているのですけど、この娘は父親代わり、妹思いの兄を逆恨みして殺してしまうのですから実際デキの悪い娘です。母親に言わせると「何をやらせても失態ばかり。面倒を起こす都度、守ってきてくれた兄を殺すなんて」。兄は事故死と判定されるのですが、もちろんベスの犯行です。理由は「恋人を婚約者と認めない。説教ばかりして束縛する。兄が死ねば会社経営は自分がやる」という野望があるからです。失態ばかりの彼女に、兄が社長だった大手広告会社の経営ができるとは思えませんが、ベスはガラリ変身。役員会を召集し改革のノロシをあげ、人事を一新し婚約者を副社長にすると発表した▼ところで彼女が一新したのは真っ先に美容院に行くこと。お買い物に繰り出し服選びに熱中。辟易した婚約者は「僕は仕事があるからお先に失礼する」。兄が毛嫌いするほど卑しい男でもなさそうでしたけど。シリーズ中、平凡な出来栄えですけど、何が見ものかというとスーザン・クラークの豹変ぶり。オドオド兄の顔色を伺っていた世間知らずの妹が兄殺害をやってのけ、コロンボに見破られるまで、あれよ、あれよと驚きの愚行を繰り返す。もっさりした良家のお嬢さんふうからモデル並みの着こなしで役員会に出席する。学生みたいなありきたりのヘアスタイルは、バッサリと金髪のセミロングに、眼光鋭く言葉遣いは命令調、小うるさいだけの母親などもはや、いや婚約者さえ眼もくれない。婚約者ピーターは会社の法律顧問でして非常に記憶力がいい。コロンボは疑問点を逐一ピーターに質問し、頭脳の中で現場の再現を図ります。腹の中ではベスの犯行だと確信している。一連の質問は、積み上げた状況証拠の隙にある、ベスの手落ちをつかむのが目的だ▼母親、婚約者、使用人。コロンボが会話を交わした限りみなまともな社会人です。被害者に向かって三発も発砲するなど、強い恨みを持っているのはベス以外にいない。コロンボはベスのコンプレックスと抑圧に比例して、膨れ上がってきた権力欲と性格の歪みが尋常でないと見ていました。またそれにふさわしい、いかれた行動をスーザン・クラークがやってのけるものだから、単純な筋書き、お粗末なトリックの割に見応えがありました。スーザン・クラークは当時31歳。「刑事マディガン」「マンハッタン無宿」の、ドン・シーゲル監督もので、リチャード・ウィドマーク、クリント・イーストウッドと共演。テレビドラマ「愛のメダリスト」では、実在のオリンピック金メダリストを演じエミー賞主演女優賞に輝いています。本作では美貌のヒロインではあるが、横柄で傲慢で、社会的訓練を経ていない、幼くてサイコという怖いギャップを好演しました。