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特集「刑事コロンボと9人の女優」

2019年9月3日

特集「刑事コロンボと9人の女優」③アン・バクスター
偶像のレクイエム(1974年 テレビ映画)

監督 リチャード・クワイン

出演 ピーター・フォーク/アン・バクスター/メル・ファーラー

シネマ365日 No.2956

女優とトップデザイナー 

特集「刑事コロンボと9人の女優」

 イチ押し女優はアン・バクスター。アップになるとやはり凄みがあります。この時50歳。23歳の「剃刀の刃」でアカデミー助演女優賞をとった時は23歳。「イヴの総て」で同主演女優賞にノミネートされた時は27歳。でも本作がいちばんよかった。演技賞云々ではなく、女優の存在という点で。そうそ。忘れてはいけないのに「荒野を歩け」があります。39歳でした。しがないレストランを切り盛りする女主人。ローレンス・ハーヴェイに好意を持つが、彼はキャプシーヌが好き。報われないけれど男の恋路を実らせてやろうと骨を折る骨太の女を演じました。今回のヒロインだって骨太の殺人犯です。往年の大女優ノーラ(アン・バクスター)は、製作した映画がみな赤字だったが、会社の帳簿をごまかして自分は1ドルも損をしていなかった。そこへ偽帳簿を嗅ぎつけたゴシップ専門のコラムニスト、パークス(メル・ファーラー)が口封じの金をほのめかし脅してきた▼ノーラは自邸の駐車場の前にガソリンをまいて、入ってきたパークスの車を炎上させたが、死んだのは自分の秘書のジーンだった。ノーラはショックで気絶する。コロンボ(ピーター・フォーク)は(でもおかしい)。例によってしつこく聞き込みを続け、ノーラさんは憧れのスターだとか、カミさんに電話でせめて声を聞かせてやってくれとか、大女優をおだてて警戒を解かせ、彼女が酒を飲むのは緊張した時だけという癖も聴きだす。これがラストに生きてきます。真相はジーン殺害こそノーラの真目的で、彼女は14年前失踪して死体も見つからないノーラの夫が、庭に埋められていることを知っていた。だからノーラは金に困っているにもかかわらず邸宅を売却しようとしない、噴水はいつも水が止まっている、配管工事のためには芝生を掘りかえさねばならないからだ。事実を知っているジーンがパークスと結婚する。いつどこで口をわるかわからない、えらいことだ、殺しちゃおう…だったわけ▼メル・ファーラーのせこい脅迫者がいい。この人、プリンストン大学を出てとびきりアタマがよくて、監督やったりプロデュースやったり、多才を発揮するのだけど、14年間オードリー・ヘプバーンの夫だったことにもっとも驚嘆する。スネに傷のあるノーラにネタを突きつけて一儲けしてやろうと舌なめずりする男と、鼻であしらいながらどうやって片付けてやろうかと、腹の中でガラガラ蛇がとぐろを巻いたりほどいたりしている女の噛み合わせ。芸達者二人がなかなかよかったです。もう一人、この人がいる。劇中コロンボが「うわ〜、すごい、みな本物ですか」とオスカー像に驚くシーンがあります。衣装デザイナー、イーディス・ヘッドが黒い髪のショートカットで登場しています。アカデミー衣装デザイン賞8回受賞。カリフォルニア・バークレー校、スタンフォード大卒の秀才。友人の描いたデザイン画でオーディションを受け、映画会社に就職、メキメキ頭角を現し、ヘッドがデザイン担当だと知ると、撮影終了後衣装を持ち帰ることを条件に、出演をOKする女優もいたほど。バクスターとは親友で、ヘッドの宝石のコレクションはバクスターの娘に遺贈されたエピソードがあります。そんな、こんな、で見ていくと、とても分厚く面白い作品です。