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特集「刑事コロンボと9人の女優」

2019年9月4日

特集「刑事コロンボと9人の女優」④ジュリー・ハリス
別れのワイン(1974年 テレビ映画)

監督 レオ・ペン

出演 ピーター・フォーク/ドナルド・プレザンス/ジュリー・ハリス

シネマ365日 No.2957

女性は怖いですな 

特集「刑事コロンボと9人の女優」

 「エデンの東」から18年、48歳になったジュリー・ハリスがキリッとして、忠実かつ有能な秘書カレンを演じます。オープニングは、ワイナリーのオーナー、エイドリアン・カッシーニ(ドナルド・プレザンス)がワイン協会の幹部3人を前に開陳する講釈「この赤は100年前イタリアで誕生し、ピエモンテの冬に苦しみ、アメリカに渡る航海に耐え、カリフォルニアの輝く太陽の下で完成した。年に10ケースしかできない」一口味わった会員たちは感に耐えぬように賞賛する。兄カッシーニは25年間ワイン作りに捧げてきた初老の男性。彼の作るワインは業界でも特別だが、利益を度外視する高級ワインの製造は商業性がない。腹違いの弟リックはワイナリーを売却すると兄に告げに来た。売る相手は「マリノ酒造だと。1ガロン69セントの安酒を作る?」「でも儲けている」「お前と同じ血が流れていると思うとゾッとする」。弟は受け流し「結婚するのだ。金がいる。父が死んであなたは現金を、僕は会社を譲り受け、経営をあなたに任した。でもあなたは損ばかり」▼カッシーニは怒りに任せ弟を電話機で殴り気絶させると、残業しているカレンを帰らせ、ワインセラーに運び込み手足を縛り上げると崖に運んだ。一週間後リックは遺体となって発見、事故死と判断された。その間兄はニューヨークでワインのオークションに参加していたから疑われようがなかった。しかしコロンボ(ピーター・フォーク)は「リックの死亡推定時刻は雨だった。雨の日にスキューバダイビングをするか。車好きの彼が高級車にホロもかけず放置するか。エイドリアンは必ず自分でワインを移し替えるのにその日は協会の会員に任せた(犯行直後で緊張して手が震えた)。検視の結果リックの胃袋はカラだった、彼は大食いだったのに」などの理由から他殺を確信する。もう一人、エイドリアンを疑っていたのがカレンだ。彼女はコロンボにワイナリーからリックが出て行ったのを見た、と証言した。これでコロンボはエイドリアン犯人説の疑惑を一時解くのだが、カレンがエイドリアンをかばった目的は他にあった▼「君は秘書以外の何者でもない」というエイドリアンにカレンは「月給700ドルよりもっといいものをいただくわ。これからは秘書じゃない、パートナーよ。12年間尽くしたのよ。今度はあなたの番です」「愛情は無理強いできない」「そうね。でも愛がなくても結婚はできるわ。つまらない理由で結婚するカップルは世間にザラにいるわ」整った冷静な顔立ちで眉も動かさず「選択の余地なし」の最後通牒をつきつける。彼女の出演作には「動く標的」「禁じられた情事の森」「サイコXX」「さすらいの航海」「愛は霧の彼方へ」などがありますが、本作がいちばん印象的でした。エイドリアンの無罪を立証し、結婚し、ワイナリーごとごっそりいただくってことね。けっこうなビッチであります。「エデン」のアブラよ、今いずこ。女優というものを考えさせられるわ。善良で整ったノーマルな美女より、ここぞ、という時にあいくちをスルッと抜く女が「スクリーン映え」するってことね▼女性は大げさでなく何世紀の間、カレンのようなどんでん返しを夢見てきただろう。よき妻であり秘書であり、愛人である従順な、男にとって都合のいい女に、もちろん経済的に後顧の憂いなく颯爽と「さらば」を告げるシチュエーションを。本作はシリーズの傑作と呼び声高いのですが、理由はエイドリアンの孤高のワイン作りの情熱と作品の品格でした。彼はコロンボと別れのワインを酌み交わし「カレンが真相を察知し、結婚を迫ってきた。女性は怖いですな。結婚するより刑務所のほうが自由かも」。これにも男の一種の実感がこもっているように思える。「品格」なるものが、下世話な男女の真実に裏打ちされているところがいい(笑)。「別れのワイン」に使われたのはモンテフィアスコーネの「エスト!」イタリアの極上の白のデザートワインです。