女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「刑事コロンボと9人の女優」

2019年9月5日

特集「刑事コロンボと9人の女優」⑤リー・グラント
死者の身代金(1973年 テレビ映画)

監督 リチャード・アーヴィング

出演 ピーター・フォーク/リー・グラント

シネマ365日 No.2958

コロンボと渡り合う 

特集「刑事コロンボと9人の女優」

 リー・グラントです。とても綺麗な人ですよ。キャリアがすごい。24歳のデビュー作「探偵物語」でカンヌ国際映画祭女優賞、赤狩りのブラック・リストに載ったためスクリーンから遠ざかり、40歳で「夜の大捜査線」に復帰、「シャンプー」でアカデミー助演女優賞。出演作が多数続くが印象深かったのはホラーのカルト「面会時間」のヒロインがあります。「Dr.Tと女たち」、74歳の時の「マルホランド・ドライブ」もあげたい。弁護士レスリー(リー・グラント)は夫が弁護士協会の会長。名声のある夫を踏み台にしてのし上がってきたが、人望が厚く誰からも尊敬される夫が鼻につき、最近では穏やかな彼を舐めちゃって「年寄りの能なし」などと暴言を吐くようになった。夫は愛想を尽かし離婚を決意した。それはまずい。弁護士会長の妻という有利な立場は手放せない。夫が死んで遺産を相続するのがベスト。で、妻はあっさり殺しに走る。誘拐に見せかけ、動産、不動産、かき集めて身代金30万ドルを用意した▼その金は(後でわかるが)すり替えて自分の手元に残し、亭主は死んでくれた、金は残った、立場も安泰という筋書きを書いた。自ら操縦する小型機から現金の入ったバッグを指示地点に落とした…現場に来たコロンボは首をひねる。逃走を急ぐ犯人がなぜバッグごと金を持ち去らず、わざわざ他のバッグに金を詰め替え、カラのバッグを現場に残したのだろう。なさぬ仲の娘は継母のレスリーを性悪女だと決めつける(当たっているが)。レスリーは何らかの策略でパパを殺したのだ…憂い顔の娘にコロンボが近づき、芯から親切に「相談に乗りますよ」。最強の反レスリー連合軍が出来上がった。弁護士としてのレスリーは「ここで泣くのよ」と依頼人に策を授けるなど、巧妙な駆け引きで強気の法廷を維持してきた。こんなに能力があるなら、夫に頼らなくてもやって行けるのに、と思うのは50年後の我々の感触で、弁護士という専門職でさえ、女一人では不利があったし、業界の誰からも好かれていた夫の好環境は利用したかったのだろう。しかし最大の失敗は彼女の欲の深さで、もしレスリーが夫を消しただけなら、夫の人脈もコネも法曹界での味方も得られた。殺しは単なる事故で見過ごされただろう。アタマがいいばかりに30万ドルを横取り(という言い方もおかしいが)したことが、コロンボの不審を招く原因になったのよ▼確信犯である娘は継母と「示談」で手を打つ。これは以後コロンボの常道となるやり方で、犯人と思しき人物の家族や友人の中から、不仲の誰かを抱き込んで情報を掴み、犯人を追い詰める彼の流儀がシリーズ2作目にして明らかです。レスリーはコロンボにこう言っています。「しょぼくれた身なりは見せかけ。敵の油断を見透かしていきなり罠にかける。頭からっぽのフリをするのも奥さんや従兄の内輪話を打ち明けるのも。大した役者だわ」。歴代犯人の中でも、コロンボに引けをとらぬ知力で互角に渡り合える稀有な女性でした。欲を言うなら、シリーズ中一人くらい、コロンボを讃嘆させるくらいの、極北のビッチとして登場してほしかったわ。