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特集「刑事コロンボと9人の女優」

2019年9月6日

特集「刑事コロンボと9人の女優」⑥オナー・ブラックマン
ロンドンの傘(1974年 テレビ映画)

監督 リチャード・クワイン

出演 オナー・ブラックマン/リチャード・ベースハート

シネマ365日 No.2959

♪ゴールド・フィンガー♪ 

特集「刑事コロンボと9人の女優」

 オナー・ブラックマンとリチャード・ベースハートが落ち目の役者夫婦で、旦那が女房を使ってプロデューサーをたぶらかし、大劇場で「マクベス」の公演にこぎつけたが、騙されたと知ったプロデューサーがカンカンに怒って楽屋に怒鳴り込み「公演は中止だ」と爆発。旦那ともみ合いになり、女房は化粧品(クリームか何か)の瓶を投げつけ、プロデューサーの頭に当たって頓死。慌てた夫婦はプロデューサーの邸宅に死体を運び込み、階段から落ちて死んだと偽装する。イギリスの捜査技術を見学に来ていたコロンボが捜査に噛んで犯人を追い込み逮捕というストーリーです。クリームの瓶が頭に当たったくらいで死ぬか? ラストはコロンボがよくやる証拠の偽造で、旦那はうろたえ頭がおかしくなり、女房は動転して犯行を自白する。曲(くせ)も何もない、作品なのですが、オナー・ブラックマンが天然気味の女優に扮して、曲のない作品に曲を盛り込みました▼彼女は現在(2019)93歳。イギリス演劇界の生き字引、などと硬いことをいうより「ゴールド・フィンガー」のボンドガールを思い出して欲しい。当時39歳だった彼女がボンドの相手役となって(え〜年増だな〜)という、驚きとも冷やかしともつかぬ反応だった。モニカ・ベルッチが「50歳のボンドガール」と話題になったのと同じ、女の年齢への貧相なリアクションは半世紀たっても同じです。ところがこのオナー・ブラックマン。大げさに言うと以後のボンドガールのイメージをガラッと変えた元祖美魔女です。①パンツルックが抜群に良く似合う②ボンドを投げ飛ばす武闘派。オナーは30代から柔道を習っていました③サクサクした持ち味で熟女のネチネチ感がない(色気がないとも言えるが)。つまり今時のジェンダークロスを体現した先駆け女優なのであります。だいいちショーン・コネリーに張りあえる貫目が、10代やそのへんの若い女優には難しいかもね。トム・クルーズだって「ミッション:インポッシブル/ローグネイション」で35歳のレベッカ・ファーガソンを抜擢し、続く「同/フォールアウト」でもパートナーを組んでいるじゃないですか。社会的知性を求められる女優って、ある程度の年齢が必要なのよ▼女優に年齢は関係ないというのは簡単だけど、容姿と体型を維持するのは並大抵ではないはず。あくなき整形に走って、悲しいけどピカソの絵みたいになった女優さんだっている。オナーはどうか。髪はすっかり白くなったけれど「ブリジット・ジョーンズの日記」出演時、70歳の気迫と美しさに拍手する▼リチャード・ベースハート。「道」や「白鯨」がある。でも彼を覚えたのは日本で人気だったテレビドラマ「原子力潜水艦シービュー号」のネルソン提督だ。ということで本作、ひねりがないにもかかわらず最後まで楽しめました。主演二人が次々、場当たりな知恵を繰り出し、さすがのコロンボも引き摺り回され、物的証拠がつかめない。こうなれば最後の手段、とばかり得意の捏造工作でハメます。実際に殺人も犯す犯罪者夫婦ですが、どうも憎めないのは、オナー・ブラックマンのさっぱりしたキャラによるところが大きい。シリーズ中「意外な傑作」とされる理由がわかる気がします。