女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「刑事コロンボと9人の女優」

2019年9月8日

特集「刑事コロンボと9人の女優」⑧ジャネット・リー
忘れられたスター(1977年 テレビ映画)

監督 ハーヴェイ・ハート

出演 ピーター・フォーク/ジャネット・リー/ジョン・ペイン

シネマ365日 No.2961

透き通るジャネット

特集「刑事コロンボと9人の女優」

 まあ、ジャネット・リーの綺麗なこと。「サイコ」の時よりキレイだわ。彼女はこの時48歳でした。贅肉の一片もないスレンダーな体躯。過去の大スターが銀幕復帰を狙う、よくある話には、必ず落ち目のスターのコンプレックスやその裏返しの虚栄が長々と演じられるのですが、本作のヒロイン、グレイスにそういう暗い部分を感じなかったのは、ジャネット・リーが徹頭徹尾前向きだからでしょうね。帰り咲く意思貫徹の前にはちょろちょろしたコンプレックスなど無用! とばかり彼女は復帰に反対し、資本を出さないという夫を殺しちゃう。するする庭の木伝いに地面に降りる場面の軽快な身ごなし。後でコロンボ(ピーター・フォーク)が実際に犯人の行動をなぞってみて、枝に宙ぶらりんになり、不恰好に落ちています▼グレイスの相手役として長年共演してきたネッド・ダイヤモンド(ジョン・ペイン)は密かに彼女を愛していた。今もそう。彼でさえ復帰には賛成しかねている。かつての大スターの威光がどこまで通じるか。グレイスは早々とマスコミに復帰宣言し、ネッドの演出でリハーサルを始めた。グレイスは相手役が気に入らないから代えろと、たちまち往年のわがままぶりを発揮する。ネッドは逆らわず慎重な対応。リハーサルと並行してグレイスの殺人計画は進行する。夫のミルクに睡眠薬を入れ深い眠りに誘い込んで、拳銃を握らせ、自分が手を添えて引き金を引き、頭を撃ち抜いた。自殺に見せるはずだったが、コロンボは例によってしつこい聞き込みで不審点を洗い出す。夫の自殺時グレイスは映写室で自分のミュージカルを見ていた。フィルムを交換する執事が確かめている。映写時間は1時間45分だ。しかし執事がいう終了時刻では2時間たっていたことになる。15分の間にグレイスは二階の寝室で夫を殺し、木を伝って庭に降り、別の入り口から屋内に、そして映写室に戻っていたのですけど▼拳銃は車のダッシュボードにあった。取りに行くためには庭にでなければならないが、被害者のスリッパには土がついていなかった。被害者は本を読んでいた。これから自殺する人間が本を読むか。世界一周旅行を楽しみにするか。いくつか不具合を考えあわせ、コロンボはグレイスが犯人だと突き止める。ところが意外な事実が判明する。グレイスは脳に静脈瘤があり、脳を圧迫し、物忘れ、勘違いなどを引き起こしていた。手術は不可能。1週間か1ヶ月か、よく持って2ヶ月。夫が反対したのはそれが理由だった。コロンボがグレイスを逮捕しようとすると、ネッドはグレイスに駆け寄り「許してくれ、僕が君の夫を殺した」と犯人を名乗りでて、コロンボを制する。「自白は見破られるぞ」とコロンボ。「かまわん。2ヶ月もたせる」。ネッドは連行され、グレイスは全盛期のフィルムを見ている。華やかなフィナーレで終わるラストシーンが、ヒロインの哀しさをかき立てる。本作はシリーズ中、傑作の折り紙つきです。ジャネット・リーの透き通る演技、ジョン・ベインの体を張った男の純情に胸が熱くなります。夫役はサム・ジャッフェ、といってわかりにくければ「ベン・ケーシー」の恩師、デビッド・ゾーバ博士を思い出せますか?