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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2019年9月16日

特集「映画に見るゲイ12」295
あさがおと加瀬さん(2018年 ゲイ映画/アニメ)

監督 佐藤卓哉

出演(声) 高橋未奈美/佐倉綾音/木戸衣吹

シネマ365日 No.2969

純度100%

特集「映画に見るゲイ12」

 高橋ひろみ原作のコミックのアニメ化。おもしろかったですよ。「キャロル」ジュニア版みたいで。アニメの持ち味がよく生かされていて、日光に照り返る緑の葉むら、誰もいない校庭の放課後、空白の運動場の孤独感が、キャピキャピした高校生女子たちの逆照射になっています。オープニングの山田(声=高橋未奈美)のモノローグ。「私たちは女の子どうしだけど、この間からつきあい始めました」。このつかみがとても効いています。時代は変わったのだなあ。面倒くさいこといっさいヌキ。スラッとこう言える女の子たちの恋愛って、へえ〜、そうなのか…としか言えませんデス。ストーリーは定石といえば定石ですが、山田にせよ加瀬さんにせよ、女子コミックの王道をいくヒロインですから、邪道、無軌道、頽廃、策略と無縁。それが物足りなくもなく、バカらしくもないのは、誰の身の上の物語にせよ、心のどこかで恋愛成就の潜在願望が観客にあるからか…どだいこういう理屈っぽい分析自体が「犬にでも食われろ」なのです▼山田は憧れの加瀬さんに「私、男子としゃべったことはほとんどないし、付きあうのは加瀬さんが初めてなのだけど。それでね、具体的に私、何をすればいいと思う?」ブーッ。加瀬さんはぶっ倒れる。「山田の好きなようで、いいよ」「なんだ、そっか」加瀬さんには明らかに性的関心がある。山田にしても「何をすればいい」と聞くのは、いつか加瀬さんとできることを予期しています。でも当面は加瀬さんにお弁当を作ったりして、何気に親密になっていきます。加瀬さんはインターハイに3度出場した陸上部のエース。毎日練習に明け暮れよくもてる。山田のクラスメイト、三河は「たいへんだね。パートナーが人気者だというのは」と同情する。でも加瀬さんの告白によれば「ここ(屋上)からいつも山田を見ていた。夏は麦ワラ帽、雨の日は黄緑の帽子をかぶって草むしりしていたでしょ。いつもすごいなって思って見ていたのに上を見てくれない。でもやっと目が合った。ここで」山田胸キュン。「加瀬さんと両想いなんて、大好きすぎてどうしていいかわかりません」▼家に加瀬さんを呼ぶことになった山田。「部屋で加瀬さんと二人きりなんて、ちょっとすごいこと」なのだと予感がする。加瀬さんは入ってくるなりベッドを見てクラクラ。ショートケーキも食べたことは食べたが、本日の核心は「私としてもいいと思っている?」「いいよ。加瀬さんがしたいなら」…どうも噛み合わん。加瀬さんはそんな答えじゃ物足りない。でも自制する。「部屋に呼んでくれたから浮かれちゃった。また今度にしよう。少しこうしていていい?」と山田を抱きしめるのに、山田は「加瀬さん、いい匂い」だとか、どうでもいいことを言う。さて、大学進学だ。山田は親元から通える地元大学に。加瀬さんはスポーツ推薦を受けて東京の体育大を受験する。でも山田は加瀬さんが推薦を蹴って地元大学を受けるとコーチに言ったことを知り東京へ行って、とお願いする▼今夕の新幹線で加瀬さんは出発。夕日の空。誰もいない校庭。無人の長い廊下。加瀬さんがいないなんて。山田は駅に向かって走り出す。新幹線に飛び乗った山田。二人が初めて言葉を交わしたのは朝顔の咲いていた時だった。「朝顔の花言葉は?」「はかない恋」「当たり。もう一つある」二人同時に「固い絆」。はいはい。ネメシュ・ラースロー監督は「ポップコーンみたいな映画を見ても、意味のある映画体験はできない」と断言していました。彼は「サウルの息子」で、いきなりカンヌのグランプリを、アカデミー外国映画賞を受賞したバリバリの社会派です。本作はポップコーンどころか、メロメロのショートケーキですが駄作ではない。別にショートケーキでもいいじゃん、と思わせたのは、この年齢にしかない軽さ、爽やかさを純度100%で表していたからでしょう。

 

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