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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2019年9月19日

特集「映画に見るゲイ12」298
リズと青い鳥(2018年 ゲイ映画)

監督 山田尚子

出演(声) 種崎敦美/東山奈央

シネマ365日 No.2972

愛の洞察 

特集「映画に見るゲイ12」

 これ、成長物語なのですって。恋愛ではなく。でもヒロインみぞれ(種崎敦美)は相当のフェチよ。吹奏楽部のオーボエを担当。高度な演奏技術を持っているのに、極力抑えて、フルートの希美(東山奈央)のレベルに合わせようとする。同じ部員のトランペットの高坂から「隠し事をしているみたいで、演奏がギクシャクしている、ちっとも楽しくない」この通りではないがよく似た言い方で図星を指される。外部から指導に来た新山先生はみぞれに音大進学を勧める。それを聞いた希美は「私も音大に行こうかな」と言ってみぞれを喜ばせるが。映画は現実パートと絵本パートの二本立てで進みます。一人住まいの少女リズの元にある日青い鳥の化身である青い髪の少女が舞い込む。二人は仲良く一緒に暮らすが、リズは少女が、毎日自分がパンをあげていた青い鳥だと知り、これ以上自分の元に止めるのは、自由を束縛することだと、少女を説得し大空に飛び立たせる▼みぞれは新山先生に「私がリズなら青い鳥を放したりしません。いつまでも一緒にいます」という。そう、希美はみぞれのすべて、世界そのものなのだ。高坂に痛いところを突かれたみぞれは本気で取り組む。卓越したソロでみぞれのオーボエは希美のフルートをリードし、最高の演奏を聴かせる。部員や先生の賞賛を受けるみぞれを置いて、希美は寂しく教室を出て行く。けっこううまく吹いていると思っていたが、みぞれが合わせてくれていただけ。自分はみぞれを縛っていたのだ…。この辺で、どっちが青い鳥でも黒い鳥でもエエやないかという気がしてくるのですが、そういう大雑把な見解は繊細な本作にふさわしくないみたいなのです。みぞれの思いに対して希美の感情はかなり淡白でして、大好き同士ならやるハグをみぞれもしてほしい。両手を広げて希美を受け入れようとするのですが、「また今度」なんて希美はクルリ、背中を向ける。お互いの好きなところを言い合うゲーム(みたいなもの)で、みぞれは希美の「声が好き、歩き方が好き、話し方が好き」といっぱい挙げるのに、希美は「みぞれのオーボエが好き」とたったひとつ。全然バランスが取れていない▼希美は音大志望から一般大学進学を決める。みぞれは音大進学を変えず、二人は初めてそれぞれの志望を認め合った対等の立場に立つ。ラストはでも、どこかで二人の想いが交差するであろう、ハッピーエンドを予感させています。けっこうでございました。この映画は、驚くほど支持が高かった。思うにいわゆる青春映画ではない、ヒロインの高濃度フェチ感覚が鋭かったためではないかと思います。みぞれは希美フェチであり、フグフェチである。フグの水槽ばかり見ている。理由は、なんかあったようですが忘れました。スクリーンは終始、吹奏楽部の部員たちのガールズトークと、反比例するみぞれのフェチモード。希美さえあれば何もいらない、だから青い鳥を逃すなんてめっそうもない…ひとつ脱線すればかなり危険な精神状態ですが(恋愛って元々普通ではない状態ですから)、それが青い鳥を逃すの、放すのと思い惑ううちに、彼女の心の揺れが落ち着いてよかったです。そうそう、ハグね。二人はめでたく抱き合っていましたよ。希美も、ちょっと変わり者程度に思っていたみぞれが、エクセレントなスキルの持ち主だとわかって尊敬する。そんな彼女が寄せてくれる好意が憎かろうはずはない。大学進学して同棲でも始めるのかしら…そういうゲスな勘ぐりを許さないほど映像は美しく、みぞれという、心清らかな少女の洞察と愛の示唆に満ちています。