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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2019年9月20日

特集「映画に見るゲイ12」299
ユリゴコロ(上)(2017年 サイコ映画)

監督 熊澤尚人

出演 吉高由里子/松坂桃季/松山ケンイチ/佐津川愛美/木村多江

シネマ365日 No.2973

どこが無償の愛よ

特集「映画に見るゲイ12」

 かわいそうに、ヒロイン、美紗子(吉高由里子)は、二度殺されかけるのね、それも夫と息子に。高評価を得た本作だけど、どうも感動しにくいのよ。美紗子は明らかに病気です。ユリゴコロとは心が安全な場所で生きているという安心感のようなものらしいけど、美紗子は人を殺した時だけ落ち着く、つまり死が自分のユリゴコロなのだと自分に言い聞かせている。そんな美紗子が唯一満たされる存在が、リストカット依存症のみつ子(佐津川愛美)だった。二人は料理学校で出会う。本作を「ゲイ映画」の範疇に入れたのはやや強引かもしれませんが、美紗子のその後の一生に「みつ子」という名前が染み込んでいるところを見ると、あながち牽強付会でもないと思えるのです。無数のリストカットのあるみつ子は「これをやると頭がすっきりする」。そんな彼女に自分と同質の異常性を美紗子は感じる▼食べたら吐くみつ子のために一口サイズのおにぎりを作ったり、消化のいい煮込みうどんを食べさせたり、「不思議。あんたの作ったものなら食べられる」というみつ子に、これ以上手首を切らせたくないと思う。しかしみつ子のリストカットはやまない。彼女は過去のトラウマから男を憎んでいる。二人が並んで歩いていた時、ナンパしてきたラーメン屋のジョーが、たまたま美紗子が独りの時に声をかけ名前を訊いた。「みつ子」と名乗った美紗子は隙を見て高い石段から男を蹴り落とし死なせる。「みつ子でなければ私のユリゴコロは満たされなくなっていた」美紗子がジョーを殺したことを話すと、みつ子「二人で遠くへ行こうよ」。美紗子「本気でそう思うなら逃げるのではなく、学校を卒業して外国へ行こう。二人で店を持ち私が料理してみつ子がケーキを焼く。それまで手首は切らないで」と約束させる。みつ子が手首を切らなければ「私は(満たされているから)人を殺さないですむと思った」のです。でもみつ子は「我慢できない」「どうして。一緒に店をやろうって約束したじゃない」「切っていないと訳がわからなくなる。切っている時だけ全部忘れられる」「いま切りたい?」頷いたみつ子の腕に美紗子は深々とナイフを入れる。みつ子は細い声で「どこかの町に私たちの店が見える。私はケーキを焼き、あんたは料理を作っている…」。自分もみつ子も「人間のできそこない」だと美紗子はつぶやく▼みつ子を失くした後、美紗子は就職したものの人間関係が上手く結べず1年で辞め、売春に手を染める。「男の欲望に吐き気をもよおせば私はユリゴコロを満たせた」というから根っからのマゾです。客をさがす美紗子が声をかけたのが洋介(松山ケンイチ)だった。体を求めない洋介には暗い過去がある。大学生の時、溝に落ちた帽子を拾おうとする男の子を手伝い、重い鉄の板を持ち上げた。女子中学生が支えてくれたが、鉄板はすべりおち男の子の頭を砕いて死なせてしまった。その中学生が美紗子であり、彼女はわざと手を離してユリゴコロを満足させ、洋介は過失致死で執行猶予、親から譲り受けた家を売って賠償金に当て、一文無しとなり、生きる気力もなくその場しのぎで食いつなぎ現在に至る。27歳。どの男の子かわからず妊娠した美紗子に洋介は結婚を申し込む。生まれた男の子が亮介(松坂桃季)だ。美紗子の告白ノートで彼女があの時の中学生であり、殺人依存症であることを知った洋介は「あなたの手で殺して」という美紗子をダムから突き落とそうとするができず、地図と金を与え「二度と目の前に現れるな」と言って車で去る。美紗子は「ユリゴコロ」なんていい加減なネーミングで病気をごまかしている、殺人依存症の危険な症状よ。きちんと病院か刑務所に入れて最後まで見届けてやるのが家族ってものでしょう。どこが「無償の愛」よ。厄介払いしただけじゃない。いかれたジャケ写で人をたぶらかすなよ。これが「夫に殺されかけた」場合。次は「息子に殺されかけた場合」です。

 

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