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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2019年9月23日

特集「映画に見るゲイ12」302
荒野を歩け(下)(1962年 ゲイ映画)

監督 エドワード・ドミトリク

出演 ローレンス・ハーヴェイ/キャプシーヌ/ジェーン・フォンダ/アン・バクスター

シネマ365日 No.2976

抑圧と規制を超えて 

特集「映画に見るゲイ12」

 ドヴは、自分を好きになっていたレストランの女主人テレシーナにこんな説明をする。これが「荒野を歩け」の意味です。「聖書の話だ。ホセアは娼婦のゴメルに恋して結婚した。彼女は淫行を繰り返しホセアは怒って奴隷に売った。しかし女が忘れられず連れ戻した。その後も女の淫行は治らなかった。ゴメルを愛するホセアは彼女を荒野に連れて行った。誘惑や他の男から遠ざけるため。俺もそうする」「祈っているわ」。しかしジョーはハリーを手放さない。「一緒にお酒でも飲まない?」なんとかなだめようとするジョーに「あなたとじゃなく、男と飲むわ」男と飲むわ、がジョーにとってはアッパーカット。「望み通り地獄行きの車に乗せるわよ」「いいわね。運転手がハンサムなら」。そんな時「人形の家」にキティが、仕事がほしいとやってきた。ジョーはキティとドヴの出会いを聞き一計を案じる。「未成年者に州境を超えさせるのは違法。加えて強姦の罪。キティの証言次第であなたは25年のムショ暮らしよ。ハリーのことは忘れて。黙って出て行くなら告訴は取り下げる。旅費も払うわ」▼「彼を刑務所にやらないと約束してくれたら彼を出て行かせ二度と会わない」とハリーはジョーに訴える。「明日正午までに出て行けば彼の無事は保証する。でもハリーに会いに戻ったら25年よ」。ジョーの用心棒たちとドヴがもみ合いになり、男が発砲した弾はドヴではなくハリーに当たる。ハリーはドヴに抱かれて死ぬ。ドヴの純情一途が女を追い込んだとも言えるのですが、遠からず破綻は目に見えているから、キャプシーヌの「死なせ落ち」しかないと途中で思わせるのが玉に瑕です。最後はジェーン・フォンダが役得です。彼女は自分とドヴの間には何もなかったこと、強姦はジョー側のでっち上げであることを証言し、恐喝で逮捕されたのはジョーでした。脇役陣が豪華でした。バーバラ・スタンウィックを筆頭に、ジェーン・フォンダ、アン・バクスター、どちらものちのオスカー女優です。アン・バクスターは「剃刀の刃」でオスカー助演女優賞を受賞しますが、記憶に残るのはベティ・デイビスを陥れた「イヴの総て」かも▼キャプシーヌは幸せな女優の一生とは言えませんでした。晩年スイスのローザンヌを終の住処とし、わずか20キロほど離れた村に、親友オードリー・ヘプバーンの自宅がありました。彼女は週に二度ほどヘプバーン宅を訪問し、親しく行き来していました。後年はウツ症状に悩み、ローザンヌのマンションから飛び降りました。自分の財産をオードリーに託し、ユニセフと赤十字のために使うことを指示しています。同時代の「噂の二人」にせよ「ベン・ハー」にせよ、細緻なセリフと俳優の巧みな演技で生き延びてきたゲイ映画をみると、いくら規制しても人間の本質と表現への意欲は、抑圧の下から、岩の隙間から芽吹く芽のように光を吸い込むことをやめない。その意味で骨太の映画でした。最後に一つわからなかったこと。オープニングは真っ暗な闇に光る黒猫の目。猫は住処の土管を出てのっそりと歩き出す。急ぎもせず右顧左眄もせず、確固たる目的があり何者にもそれを邪魔させないという、堂々とした歩き方です。ラストにもう一度この黒猫が出て、ゆっくりと歩み去ります。ジャケ写までこいつの一人舞台です。なんでしょう、この暗喩。作風とロシア系の出自だということから、マッカーシズム対象となったエドワード・ドミトリク監督は、かくもワイルドに冷静に、人は己が荒野を行けということか。赤狩りに対する黒い猫か。意味は不明でしたがユニークでした。

 

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