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特集「ベストコレクション」

2019年10月9日

特集「コスモス秋風に揺れ/10月のベストコレクション」⑨
モンスターズ 悪魔の復讐(上)(2019年 社会派映画)

監督 クレイグ・マクニール

出演 クロエ・セヴィニー/クリステン・スチュワート

シネマ365日 No.2992

孤独の底 

コスモス秋風に揺れ/10月のベストコレクション

 世界三大未解決事件のひとつ、リジー・ボーデン事件は本欄でもエリザベス・モンゴメリーの「リジー・ボーデン 奥様は殺人鬼」がアップ済み、クリスティーナ・リッチの「MONSTER  モンスター」が続きます。これら二作が、未解決事件をたどる裁判や証言といったデータ処理に比重があったのに比べ、ヒロイン二人、リジー(クロエ・セヴィニー)とメイドのマギー(本名ブリジット=クリステン・スチュワート)の、恋愛が生じるに至ったインサイドへの踏み込みが、ドラマを新しくし、深みを与えました。主演二女優が好演しています▼地元の名家ボーデン家は、妹娘リジーを、父親がいつも「一家の恥だ」と罵る異常に厳格な家庭。理由は未婚である、一人で劇場に行く(良家の子女のすることではない)、社交性がない…が、もっとも大きな理由は父親に反抗的である。母親は継母でリジーとはソリが合わない。姉娘エマはリジーと仲がよいものの、本作では重要な役を担っていません。事件の発端である1892年8月4日。マギーが汗をしたたらせ、ハシゴの中途に立って思いつめた表情で、しゃかりきに窓を拭いています。リジーがひっそりと庭にいる。ナシを食べたらしい。やがて屋内に入り悲鳴が響き渡る。継母が寝室に血だまりを作って倒れていた。父親はソファに顔の見分けもつかぬほど酷い殺され方をしている。外部から侵入の形跡はなく、容疑者はリジーに絞られ裁判では数人の証人が証言台に立ったが、陪審はわずか90分でリジーに無罪判決を下した▼リジーは劇場で発作を起こした。医師は「強いストレスが原因」だという。回復したリジーは納屋に来て「ヘンリー(鳩の名前)今日は何を読む?」と訊く。「わずかな時間で愛は変わることなく、真の心の交わりを妨げてはならぬ」。身の周りの世話をするマギーに「教育は受けた?」「2年です」(彼女はアイルランドからの移民)。「男は無知でもいいけど、女はダメよ」。リジーはマギーに文字を教え、本を読むようになる。「このタイトルは?」「ある少女」。扇情的なジャケ写や邦題に反して、映画は全体を通じて静かに移行します▼家に度々脅迫の手紙が届く。遺産管理を狙った叔父の仕業です。遊び人でずる賢い叔父と、恥ずかしげもなくメイドをレイプする変態の父親。リジーは遺産相続が自分たち姉妹ではなく継母だと知り、怒りが煮えたぎる。これも殺意の原因ではありました。しかしもっと大きな理由は父親が夜な夜なマギーの寝室に忍び込み弄んでいることを知ってからです。自分が隠れ家にしている納屋で、ある日マギーがうずくまっているのを見る。「私の隠れ家を奪われたわ」冗談のように言ったリジーに「隠れてはいません。休んでいるだけです」と曇った声でマギーが言う。ある日リジーは畳んだ洗濯物の間に、幼い字で「リジー様、ありがとう」と書いたマギーの手紙を読む。字が書けるようになったマギーとリジーは手紙を交換し、理解を深めていきます。階段のすれ違いで指が絡む手紙の渡し合い、家人の目を盗んで読む密かな一瞬。ある日マギーが自分宛の手紙を受け取った。心急く口調で「読めない字があります。読んでください」とリジーに差し出した。「あなたの母上メアリーは長い闘病の末、他界しました」。泣き崩れるマギーをリジーは抱きとめる。どっちもがどうしようもない孤独の底にいることを知る。