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特集「B級映画に愛をこめて」

2019年10月28日

特集「B級映画に愛を込めて12」③
Mr.&Mrs.フォックス(2019年コメディ映画)

監督 ジェームズ・オークリー

出演 ユマ・サーマン/ティム・ロス/マギーQ

シネマ365日 No.3011

愛を込めて祈るわ 

特集「B級映画に愛を込めて12」

 ユマ・サーマン、ティム・ロス、マギーQを揃えてなんでこうなるのか。詐欺師のハリー(ユマ・サーマン)は、イリーナ(マギーQ)の代理でヤクの取引に現れ、修道女にブツを渡し、ぎっしり札束の入ったトランクを引き取る。取引成功。夫であるピーター(ティム・ロス)の待つバーに来たハリーはポーカーに加わり大金をすってしまう。イリーナが金を受け取りに現れ、フォックス夫婦はこそこそ逃げ出し、高飛びしてロスに到着。昔の仕事仲間、表向きは牧師のシドニーに会いに行く。イリーナに借金を返せない夫婦は、ピーターの元妻ジャッキーが映画監督ガブリエルと再婚し、500万ドルの宝石をはめていることに目をつけ、指輪を盗んで金の代わりにイリーナに返そうとしたこれだけの話でして、ハリーの、ジャケ写の謳い文句だった天才詐欺師の腕の見せ所はなく、ピーターはただの呑んだくれ。イリーナは殺人狂で、酒場であろうとホテルであろうと銃をぶっ放し、ナイフをドスッと突き刺す。シドニーはゲイのキムキムと甘い関係だが、裏社会に通じる牧師という、面白くなるはずのキャラは残念なことに不発。元妻ジャッキーはアンガーマネジメントでヘタレのピーターや浮気男のガブリエルにも最初は寛大だが、やはりブチ切れ大乱闘を招く。ハリーとイリーナは元恋人同士だが、金の取り立てに愛は無用。冷酷なマギーQが本作でわずかに存在感を与えます。いちばんアホらしいのは、主演のユマ・サーマンが路地裏を伝うゴキブリのようにイリーナから隠れまわり、ピーターと、というよりティム・ロスと本来演じるべき詐欺術の妙味がゼロだってこと。要は二流の詐欺師夫婦が殺し屋イリーナの金を使い込んで逃げ、どさくさに紛れてジャッキーの指から奪った指輪は結局イリーナの手に渡ったというだけのドタバタ▼恋愛トラブルが無駄に多いのもストーリーをばらけさせています。その割に配役は凝っています。ガブリエルに心酔する秘書ジーナにパーカー・ポージー。サンダンス映画祭の常連で人呼んで「インディペンデント映画の女王」。「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」では裏切ると見せて、実はグレース・ケリーの右腕だったカッコいい秘書を演じました。ガブリエルの浮気相手ヴィヴィアンがソフィア・ベルガラ。フォーブス誌のもっとも稼いだテレビ女優2018年で7連覇を達成。映画「キューティ・コップ」ではオスカー女優、リーザ・ウィザースプーンを向こうにまわし、引けを取らぬ存在感で主役を務めました。シドニー役のスティーブン・フライ。イギリスの俳優で作家。小説を6冊発表。ケンブリッジ在学中にエマトンプソンと知り合う。BBCの司会者としても有名。「聖トリニアンズ女学院」では司会者役を軽妙に演じました。ユマ・サーマンにしてもなかなかお目にかかれない女優です。コメディにも強い、シリアスにも強い、ラース・フォン・コリアーのような難しい監督のもとで「ニンフォマニアック」の、半狂乱のミセスHを余裕でこなしました。20歳の彼女が「ヘンリー&ジューン/私が愛した男と女」のジューンを演じた時は、倦怠と孤独と愛に投げ込まれた愛人が衝撃的で新鮮だった。本作が「あの人は今」的映画にならないことを、愛を込めて祈るわ。

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