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特集「秋の夜長のミステリー7連発」

2019年11月1日

特集「秋の夜長のミステリー7連発」①
ビブリア古書堂の事件手帖(2018年 ミステリー映画)

監督 三島有紀子

出演 黒木華/野村周平/成田凌/夏帆/東出昌大

シネマ365日 No.3015

黒木マープル好演 

秋の夜長のミステリー7連発特集

 夏目漱石に太宰治、いわば近代日本文学の古典にして、人気トップレベルの二人の作品をめぐる因縁と、サイコな犯人は誰だ、というお話。具体的な作品名は、漱石の「それから」と太宰の「晩年」ですが、他の作品「行人」であっても「人間失格」であって差し支えない、ように思います。要は古書店にいる本好きの主人公、栞子(黒木華)の手引きで本にまつわる過去を遡る、その手法がキメ細かいのであって、消去法でいくと犯人はかなり早い段階でわかってしまうのが残念。栞子を密かに恋する五浦大輔に野村周平。彼の祖母絹子(渡辺美佐子)の若き日に夏帆、太宰コレクショナー、稲垣に成田凌。夏帆が不倫に走るのが、作家修業中の田中嘉雄に東出昌大▼子供の頃、本棚にある「それから」を手にしたばかりにおばあちゃんにビンタ二発張られ、以後本が読めなくなった読書恐怖症の大輔が、おばあちゃんの死後、本に挟んであった本屋の名前を頼りにビブリア古書堂にたどり着く。「それから」には「夏目漱石」のサインがあったが、栞子はあっさり本物じゃないと断定。ミス・マープルみたいにスラスラその根拠を明らかにする栞子に大輔は驚倒。これがきっかけで、絹子が「五浦食堂」に嫁ぎ、田中に出会い不倫に落ち、子供を身籠り、駆け落ちする決心をしたが、絹子の夫は「俺の子だ」ときっぱり。夫の思いやりに絹子は駆け落ち中止。田中は待ち合わせの「切通坂」で雨に打たれたまま別離となった。本作の見応えは犯人探しより、登場人物の描きこみにあります。例えばこの田中青年。富裕な家の一人息子が嫁ももらわず見合いもせず、誰も読まない小説製作に没頭している。たまたま食堂に来た田中が作家修業中だと知って絹子は憧れる。三島有紀子監督は本気で田中が才能あるみたいに描きますから、絹子が惚れるの、無理ないかな、とも思うのですけど、まあ世間知らずとしか言いようがない。裕福な親の金をふんだんに使って旅館に泊まり続け、せっせと執筆する先の見えない男より、生活力のある堅実な夫がどれだけ頼もしいか、当時は分からなかったのね▼太宰フェチの稲垣に扮し、どこから見ても気色悪い男として成田凌が登場しまして、彼が祖父から譲り受けた「晩年」は失火で燃えてしまった、しかし数少ない「晩年」の太宰の筆跡入りはもう一冊あり、栞子が祖父から譲り受けビブリア古書堂の逸品となっていた。稲垣は「その太宰は俺のものだ」とトチ狂い、栞子のパソコンに脅迫メールを送り、雨の日に坂から突き飛ばして足の骨を折らす、と言う暴挙に出ます。栞子に危険迫る。大輔は「晩年」を囮に犯人をおびき寄せようとするがあっさり見破られる。用意周到な栞子は、偽の「晩年」をこしらえており、大輔はそれを後生大事に守っていたわけだが(え、オレは偽物つかまされていたのか)…頭にきて古書堂をやめる(アルバイトで栞子を手伝っていた)▼田中おじいちゃんは作家になれず、古本屋の主人として失意のうちに火事で死ぬのですが、別れた絹子は無事娘を産み、彼女は大輔を産んだ。田中は別の女性と結婚し、子供を得て、その子の息子、つまり孫息子が稲垣だった。だから大輔と稲垣は同じ祖父を持つわけ。だからって全然お話に影響ないのがちょっと弱いわ。なんらかの隔世遺伝のためどうしてもどっちかが犯罪者にならざるをえなかったとか、ひとひねり欲しかったのは欲か。稲垣と大輔が「晩年」を取り合いして格闘。栞子は希少本を海に放り込み、くだらな争いに終止符を打つ。栞子がどれだけその本を大事にしていたかを知っていた大輔は海に飛び込み、本を探すのだが…何度も海に潜っては浮かび上がり、また潜って探す大輔に、栞子は別のもの、本よりも大事なものがある、と思う。最後はミステリーというよりヒューマンタッチでした。本好きな人でなくとも、けっこう面白いと思えます。黒木華が本を愛する古典的なヒロインを好演。

 

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