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特集「秋の夜長のミステリー7連発」

2019年11月2日

特集「秋の夜長のミステリー7連発」②
MONA 彼女が殺された理由(2001年 ミステリー映画)

監督 ニック・ゴメス

出演 ベット・ミドラー/ダニー・デヴィート/ケイシー・アフレック/ジェイミー・リー・カーティス

シネマ365日 No.3016

温かみと哀れみと

秋の夜長のミステリー7連発特集

 モナ(ベット・ミドラー)が自動車事故で死んだ。運転を誤って川に突っ込んだ。保安官のラッシュ(ダニー・デヴィート)はブレーキに細工がしてあった、他殺であると結論し関係者を当たると、誰もモナに同情していない。ラッシュの娘エレンは「死んで当然よ。みな喜ぶわ」。モナの夫フィルはレストランのウェイトレス、ローナ(ジェイミー・リー・カーティス)と浮気している。彼女はフィルの顔を見るなり「殺したの?」「車のスリップ事故だ」「次は私を?」エレンの彼氏ボビー(ケイシー・アフレック)は穏やかな好青年だが、逆上すると人が変わる。芝刈り機で犬を殺したことでモナに脅されていた。モナの息子、ジェフとは庭仕事のパートナーだが、ジェフの右手首がないのはなぜ?「モナほど性格の悪い女を見たことがない」「モナに長所ってあった?」ラッシュが聞いたのはそんな評判ばかりだ▼ラッシュは犯人を突き止めますが、この映画は犯人探しよりモナをめぐる人間関係が漫画チックなまでに面白い。ベット・ミドラーの憎々しさは一見の価値あり。誰彼なしに侮蔑し亭主はフライパンで殴りつける、息子を能無しと罵り同じ町の女性をバカにし、気にいらないことがあれば倍返し。嫌われるばかりで彼女は孤独か? とんでもない。どこに行くにも意気揚々。当たるを幸いなぎ倒す厄災のブルドーザーだ。しかしモナを取り巻く人たちもこれではモナにやられるのもムリはない、そういう人間模様に監督は描いている。妻の尻にひかれていじける一方、妻殺害のチャンスをうかがっている亭主、母親モナが間違って息子の手首を切り落とし、息子は母親の軋轢から逃走し年上のローナに熱を上げるが、彼女は父親とできていたが、頼りない男たちを相手にしておれないと、荷物をまとめて町を出て行くと宣言する。ラッシュ保安官の部下二人はどうやって仕事をサボろうかとばかり考えている。最後は、ホームレスが雨の夜にブレーキをいじっている夫を目撃しており、彼の証言で犯人は挙がる▼偽善、怠慢、妬みそねみ、エゴに逆恨み、人のせい、そんな人間ばかりだ。この映画にヒーローはいない、みなフツーで凡庸で、朝が来て日が暮れて、諾々と日常が目の前を通り過ぎればそれでよし。ところが見ているうち、一つや二つ自分にも思い当たる、モナに対してさえ、こんな女いるよね、という身近な存在になる。それをあぶり出すのがラッシュを演じるダニー・デヴィートだ。彼はこの映画で「良識」を受け持ち、彼が行くところ、モナを罵倒する人たちはそれによって、自分が認めたくない潜在意識を露呈する。「ローズ家の戦争」はモナ因子を核にした夫婦販だった。そう見て行くと本作が、犯罪映画の皮を被った強烈なブラックコメディであることがわかる。ダニー・デヴィートは製作にも加わり、一皮むけば地に墜ちる人間を、愛を以って、とまでは言わないが、決して酷薄に扱っていない。その意図を受けた人物像を、温かみと哀れみで演じ分けた俳優たちがお見事。

 

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