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特集「秋の夜長のミステリー7連発」

2019年11月3日

特集「秋の夜長のミステリー7連発」③
麒麟の翼(2012年 ミステリー映画)

監督 土井裕泰

出演 阿部寛/中井貴一/新垣結衣/松坂桃季/松宮淳平

シネマ365日 No.3017

別に文句はないですが… 

秋の夜長のミステリー7連発特集

 導入部もいいし、筋立ての構成もきっちり、思春期の少年たちの不安定な精神面とか、息子が隠していた事実を知った父親の苦しみとか、捜査に携わる刑事たちの地道な現場主義も好感が持てる。派遣切り、労災隠しなど社会面の問題も織り込まれ見応えがありました…と。そこでまあ順を追っていきますと、建築部品メーカー「カネセキ金属」の製造本部長、青柳(中井貴一)が腹にナイフが刺さった重傷の体で800メートル離れた日本橋の「麒麟の翼像」まで歩き力尽きて倒れた。手には血に染まった白い折り鶴。事件直後、現場で不審な青年が警官に職質され、逃走中トラックにはねられ病院で死ぬ。彼・八島冬樹は「カネセキ」の元派遣社員で、解雇された経緯がある。八島には同棲中の恋人香織(新垣結衣)がいて妊娠していた。八島には知らせていないという。捜査に当たる刑事は加賀(阿部寛)と松宮(溝端淳平)。「麒麟の翼像」が登場人物たちを手繰り寄せ、事件を解明する推移が緻密です▼中学校の水泳大会400メートルリレーで、優勝候補だった青柳悠人(松坂桃季)チームは、2年生の吉永のフライングで失格となる。腹を立てた悠人ら三人は特訓と称して夜のプールで吉永をしごき、溺れさせてしまう。溺死こそ免れたが吉永は人事不省のまま植物人間に。事件当時発見した教諭の横田は警察に届けず「吉永が一人で泳いで事故死した」ことにする。母親は「キリンノツバサ」とタイトルをつけたブログで悲しみを綴る。「キリンノツバサ」とは、日本橋の麒麟像のから旅人が各地に出発していった所以に基づき、未来と希望を象徴しているからです。八島は工場で事故に遭っていた。トラブルは工場側のミスだったが、労災隠しで八島はクビになり、直接関与していなかった青柳部長の指示と発表された。犯罪被害者として同情を集めていた青柳一家は、労災隠しの張本人としてバッシングの対象となる。悠人は学校でつまはじき、妹は手首を切って自殺未遂、「全部父さんのせいだ」▼父を嫌っていた悠人は、加賀から父が「刺されながら助けも求めず麒麟像まで歩いた」と聞き、吉永の母親のブログを見直す。悠人は一時母親のブログに「東京のハナコさん」と名乗って励ましのメッセージと千羽鶴の写真を送っていたが、父親に見つかり中止した。父は息子が中学生の時の事故死事件に関与していると知り、息子に代わって日本橋七福神を巡り、青、紫、黄色の折り鶴を奉納、白い鶴で完了するはずだった。しかし事件に息子がどう関わったのか、真実を知りたいと思った青柳は、同じ水泳部の悠人の友人杉野に会った。経緯を聞いた父親は「このままにしておけないよ」「警察に行くのですか」過去の罪が暴かれることを恐れた杉野は狼狽し、夢中で青柳を追い刺した。偶然近くを通りかかった八島は、解雇された(と思い込んでいる)青柳のバッグから思わず財布を盗み逃げようとし、トラックにはねられた。後日、派遣仲間の証言で相殺隠しは青柳の部下の指示であることが判明した。息子を思う篤実な父親を中井貴一が好演しました▼力作にこう書くのは気がひけるのですが、一つ不満点は、ラストの加賀刑事のお説教と教訓。横井教諭に彼は「君がその時事件に向き合っておれば青柳さんは杉野に話を聞こうとしなかった。過ちは隠せばなんとかなると君は生徒に教えたのだ。あんたに教育する資格はない」そうかもしれませんけどね。また故郷に帰って子供を産むと決めた香織に、麒麟像がいかに未来への希望と勇気を象徴したものであるかを諭し励ます。いいのですけどね。感じ方の問題だし、それを以って作品の良し悪しの根拠にはしませんが、例えば「ユージュアル・サスペクツ」の映像だけで犯人を告げる鮮やかなワンシーン、最高に盛り上がった頂点でバスッとエンドロールにしてしまった「セッション」や「キャロル」のダイナミックな太刀筋。え〜ちょっと待ってよ、もうちょっと映さんかい、と言いたい口を封じられ、観客は席を立てない金縛りにあう。「ボヘミアン・ラプソディ」にもそれがありました。この映画はたぶん親切すぎるのね。セリフでタラタラ説明しすぎるのが眠たいわ。でもまあ作り方の違いであって、文句を言う筋合いではないと思おう。

 

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