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特集「秋の夜長のミステリー7連発」

2019年11月4日

特集「秋の夜長のミステリー7連発」④
去年の冬 きみと別れ(2018年 ミステリー映画)

監督 瀧本智行

出演 岩田剛典/山本美月/浅見れいな/北村一輝/斎藤工/土村芳

シネマ365日 No.3018

僕は化け物になる 

秋の夜長のミステリー7連発特集

 見応えのあるいい邦画だと思うわ。第二章から始まるのがミソで、主人公恭介(岩田剛典)が、殺された恋人吉岡亜希子(土村芳)の復讐を語るところからが本作のクライマックスへの導入です。子供の頃父親から虐待を受けていた木原坂朱里(浅見れいな)と雄大(斎藤工)姉弟は、歪んだ性格に育つ。雄大は撮影中火災を起こし、モデルをしていた盲目の吉岡亜希子が焼死体で見つかった。容疑者として逮捕された雄大は執行猶予つき判決釈放。今も悠々と仕事している。フリーライターの恭介は松田百合子(山本美月)と婚約中。結婚前に特ダネをものにしたいと焼死事件の真相究明にかかった。恭介の持ち込んだ企画を、週刊誌のベテラン編集者小林良樹(北村一輝)は判決の出た事件に乗り気でなかったが、上司に促され恭介に付き合う▼姉朱里が弟に「地獄変」のような写真を撮らせたいと、亜希子を誘拐し自宅のスタジオに閉じ込め火を放つ、弟はそれを見てシャッターを切る、この写真は残っていない…そもそも狂った姉の発想が事件の発端だ。恭介と亜希子は幸福な恋人時代を送る。北陸金沢の美しい海辺の恋人たち。しかし恭介の恋慕が強まりストーカーみたいになって、恐れた亜希子は不意に姿を消す。ある日テレビ報道で亜希子が焼死した事件を知り、恭介は東京に出て雄大に近づく。事件を追うジャーナリストから、報復を誓った復讐鬼・恭介への変身に見応えがあります。小林は、大学時代の教師が姉弟の父で、家に出入りするうち父親の異常性に気づく。ある日朱里から夜の10時に家に来てくれと頼まれ、入っていくと血まみれになって息絶えた父親が。殺したのは姉と弟で、小林を呼んだのは、大人の手で自分たちを刺してほしい、それによって強盗殺人の被害者として容疑から外れる…子供の頃から悪知恵と度胸のある姉さんだったわけね▼小林は成人した朱里と情事に溺れ、雄大は「他人のものが欲しくなる」性向が著しく、恭介の婚約者百合子に触手を伸ばす。朱里と連絡が取れなくなった。恭介はツイッターの書き込みで百合子が雄大のスタジオに監禁されていると知る。小林を伴いスタジオに行くと炎上していた。炎の中には椅子に縛られた百合子が。オタオタしているうちに柱が焼け落ち男二人は避難した。恭介の前歴を調べた小林は彼がフリーライターではなく、北陸の小出版社に勤めていた青年だとわかる。金沢の勤務先に出向き、恭介と恋人の写真を見た小林は、亜希子の存在を知る。恭介と再会した小林は彼の目的が雄大の死刑、自分を刑務所送りにすることにあるとわかる。百合子は出会い系で知り合った赤の他人で婚約者を演じただけ。百合子だと思った焼け死んだ女性は、火を放つ前に恭介が縛り上げた朱里だった。恭介は血も涙もない殺人鬼に一変したわけ。いくら愛でも人殺しは人殺しだろうというべきだろうが、恭介のラストのモノローグが口を封じてしまう▼「最初に君のことを語ろう。それ以外に僕の人生に意味のあるものは少ししかないのだから」この詩的なイントロ。「君がこの世から消えてしまうと世界の全てが価値のないものになってしまう」。ちょっとくどいけど、まあ、何度聞いても女性は悪い気がしないでしょうね。でも彼女は突然いなくなり、次に知ったのは焼け死んだ報道。「君の手紙(点字)で別れを告げられてもまだ別れた気がしなかった。君が死んだ時も奇妙に聞こえるかもしれないけど、僕は君と別れていなかった。本当に別れたのは去年の冬だ」。去年の冬とは、朱里に逆レイプされた後に彼女が得々と亜希子殺害の真相を話すのを聞き、恭介は復讐を誓った時。「あの日僕は僕であることをやめた。あの化け物姉弟を相手に復讐を果たすには僕も化け物でなければならない。でも君の彼氏が化け物であってはならない。だから去年の冬、君と別れ、僕は化け物になることを決めた」。終結の仕方が非常に上手。見て損はなかったです。

 

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