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特集「秋の夜長のミステリー7連発」

2019年11月5日

特集「秋の夜長のミステリー7連発」⑤
切り裂き魔ゴーレム(2018年 ミステリー映画)

監督 ファン・カルロス・メディナ

出演 ビル・ナイ/オリヴィア・クック/ダグラス・ブース

シネマ365日 No.3019

名を残した女優 

秋の夜長のミステリー7連発特集

 小粒だけどよくできたミステリー。ヒロイン、リジー(オリヴィア・クック)は明らかに殺人狂です。彼女が連続殺人に手を染める動機が「名を残したい」というのは、19世紀末に生きる野心と才能のある女性には、大なり小なり共通していたと思えるのです。当時女性が仕事を持つのは家庭教師か、修道女か、娼婦か女優という限られた世界でした。貴族の家に生まれてさえ、天才数学者エイダ・バイロンは「私は名を残したいのよ」という一念で、コンピュータ・プログラムの開発に命を削った半生が「クローン・オブ・エイダ」として映画化されています。でもリジーのそれが「世紀の殺人鬼」というのは(ちょ、ちょっと待てよ)なのですが、出口をふさがれた抑圧が狂気を呼んだことを思うとやりきれません▼キルデア警部補は「ゴーレム事件」の容疑者の一人、脚本家ジョン・クリーの妻リジーが、夫殺害容疑で逮捕されたのを知り、裁判を傍聴する。彼女が貧しく、孤独な生い立ちにもかかわらず女優として名を成し、収入も才能もない夫の代わりに家計を支えてきたことを知る。彼女の容疑はメイドが寝酒に毒を盛るのを見たという証言からだ。メイドは元女優アベリン(マリア・バルベルデ)で、リジーと同じ劇団にいたが、恋人(リジーの夫となったジョン)を奪われ、腹いせの偽証であることは明らかだった。警部補は絞首刑に決まったリジーの無実を晴らそうと証拠固めに奔走する。もしジョンが真犯人だったらリジーは冤罪で無実となるからだ。しかしリジーはあまり協力的ではない。「救われたくないのだね」と警部補が問うと「救われる資格がない」と答える。犯人が書き込んだ本の落書きから容疑者を4人に絞った警部補は、彼らの筆跡を鑑定していく▼4人のうち3人はハズレ。ジョンの筆跡だけが手に入らない。「脚本は手書きだった」とリジーから聞き、警部補はやっと肉筆原稿を手に入れる。死刑執行まで1時間。図書の筆跡と脚本の字は一致した。ジョンが犯人だ。安堵した警部補は獄舎に駆けつけ減刑嘆願書を書くようリジーに言う。「こう書いてくれ。私はエリザベス・クリー。9月にゴーレムの正体が夫であることを知りました」。目の前でスラスラと書くリジーの筆跡は、まさに犯人の残したそれ。リジーが落ち着き払っていう「私はゴーレム」…悪夢だ▼リジーの殺人は娼婦、古着屋の夫婦と子供一家惨殺、劇場の変態支配人、夫のジョン、老いた老哲学者…どれも喉を切り裂いたうえ、顔や体にナイフを突き立てる残忍な手口だった。警部補は迷った挙句、リジーの筆跡を火にくべ、彼女を連続殺人犯ではなく(この罪は夫ジョンにかぶせ)夫殺しの女優として死刑台に送る。絞首台にたったリジーは閑散とした執行場を見渡し「誰もいないじゃない」「極悪犯以外は公開しないのだ」と執行人。「私は大物よ」と叫ぶ姿が痛い。リジーの夢の一端を受け止めたのは劇場の仲間たちだった。彼らは、特に座長のダン・リーノはリジーの才能を愛していた。無能なジョンとの結婚を反対したのも彼だ。彼は夫殺しの女優を主役に芝居を書き、舞台は連日満員を続けていた。リジーを舞台で生き返らせたのだ。ある日事故が生じた。リジーを演じる女優アベリンの首吊りの細工が稼動せず、アベリンは実際に首を括ってしまった。急遽ダンが女装し舞台を続けたが、たぶん、リジーの敵だったアベリンへのダンの復讐だろう▼ビル・ナイ(「あるスキャンダルの覚え書き」「パレードへようこそ」)、ダグラス・ブース(「ゴッホ最期の手紙」「メアリーの総て」)、マリア・バルベルデ(「汚れなき情事」)、オリヴィア・クック(「ベイツ・モーテル」「レディ・プレイヤー1」。主演・助演申し分ない布陣です。もうひとつ、本作を成り立たせる重要なセット、世紀末の犯罪都市ロンドン。据えた場末の匂いまで漂ってくる貧民街、酒場、劇場。本作はキルデアを演じるはずだったがガン治療のため降板、2016年死去した名優アラン・リックマン(「ギャラクシー・クエスト」「シャンプー台の向こうに」「ハリー・ポッター・シリーズ」に捧げられました。

 

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