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特集「ナンセンスは素敵だ」

2019年11月26日

特集「ナンセンスは素敵だ5」① 
アイアン・スカイ(2012年 ファンタジー映画)

監督 ティモ・ヴオレンソラ

出演 ユリア・ディーツェ/ゲッツ・オットー/クリストファー・カービイ

シネマ365日 No.3039

やるせないおバカ映画

ナンセンスは素敵だ特集

 クレージーでパンクなこの映画に、ひねりをかませたのが、月の裏(ダークサイト)に生まれ育った地球学者レナーテ・リヒター(ユリア・ディーツェ)です。彼女はマッドな科学者の娘であり、月面親衛隊准将クラウス(ゲッツ・オットー)の婚約者でもある。1945年、ナチスは崩壊寸前に月へと脱出し、地球侵攻の準備をしていた、という前提でお話は進みます。2018年、アメリカは大統領選挙キャンペーンの一環として46年ぶりに月の裏側にアフリカ系アメリカ人のモデル、ジェームス(クリストファー・カービー)を着陸させた。カービーはナチの秘密基地「ヘリウム3」の発掘場を発見するが捕虜となり、レナーテの父リヒター博士によって白人に変えられる。博士はジェームズの持っていたスマホを使えば開発中の秘密兵器「神々の黄昏」を完成できるとわかったが、スマホはバッテリー切れ。スマホを求めてクラウスはジェームズを案内人とし、合衆国大統領と会うべく地球に向かう。レナーテも同行した▼大統領選対委員長のヴィヴィアンは、支持率低下を怒る大統領に罵倒されていた。明日は大統領と打ち合わせだというのに無策のスタッフを「ドアホ、ノータリン」と八つ当たり。ニューヨークに現れたクラウスは、ジェームズが行きがかりで捕まえたヴィヴィアンに「大統領に案内しろ。私は第四帝国准将。任務が完了し次第我が部隊が突入。貴様らクズどもの時代は終わりを告げるのだ」。ヴィヴィアンはイかれた連中に奇跡の発想を得る。選挙戦の隠し玉としてクラウスとレナーテを大統領に会わせる。レナーテが所信表明する。「我々は病んだ世界を治す医者です。無気力な世界にはビタミンが必要。弱った世界にパワーをもたらさねばなりません。我々は健康にして勤勉かつ明晰、慎み深く、父と母から受け継いだ愛と勇気の体現者。我々こそが全人類にもたらされる福音なのです。心は一つ。歩む道も一つ」よし、これはいけるぞ。大統領は演説にまるパクリ。支持率は急上昇だ▼ヴィヴィアンと共に権力の中心に近づいたクラウスは「大統領を殺したら米軍を掌握できるか。そうなら月を攻撃し現在の総統は抹殺する」。ところが総統は一足早く地球に到着していた。裏切り者のクラウスを大逆罪で処刑しようとするが、あっさりヴィヴィアンに殺される。すでに月の裏からは地球侵略軍が発進し、ニューヨークを襲撃した。合衆国は宇宙戦艦を繰り出し月面軍に勝利したが、国際会議の席上、ナチスが開発したヘリウム3の奪い合いで会場は紛糾。阿鼻叫喚の乱闘で、大統領はヒールを脱いで当たるを幸い滅多打ち…。地球防衛軍である宇宙戦艦まで内乱が勃発、地上では各国の核攻撃が相次ぎ地球は死の灰に覆われた。生き残ったのは月に帰ったレナーテとジェームズ。月面基地の荒れ果てた教室で、レナーテは子供達に地球で見た実情を伝える。戦争、裏切り、権力争奪と侵略、殺し合い…同時にレナーテの生まれ故郷、月面裏の実態は偏見、差別、欺瞞に覆われた洗脳と権力闘争の世界だった▼おバカ映画と笑い飛ばすには、やるせない荒寥感を漂わせて映画は終わります。「マーズ・アタック」に似ていますが、あの作品のラストの明るさと救いはありません。ホワイトハウスの執務室でエステする大統領、剛直に見えて日和見のクラウス、スマホに驚愕する天才科学者(メークがアインシュタインそっくり)、権威を振り回しただけであっさり殺される総統。コミカルなシーンはじゃかすか彼らの愚かさを引き立たせる。しゃちこばったイデオロギーを屁とも思わない自由人ジェームズと、愛の信奉者レナーテが生き残るのがホロ苦い救いでした。ユリア・ディーツェはケイト・ブランシェットに会ってアドバイスをもらい、レナーテのような究極の状況に直面し、人間はどういう選択をしなければならないかが描かれている、そんな役を演じたいと言っています。

 

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