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特集「ベストコレクション」

2019年12月11日

特集「令和の師走ベストコレクション」② 
ともしび(下)(2019年 社会派映画)

監督 アンドレア・パラオロ

出演 シャーロット・ランプリング

シネマ365日 No.3054

願い事をすれば叶うの 

 一つ気になったのがアンナの経済力だけど、家政婦のパートでそれなりの収入はあるみたいだし、雇用主の女性はアンナが気にいっている、幼い息子もアンナになついている。夫は刑務所だが、それを理由に解雇される様子はない。確保できる安定収入さえあれば第一関門突破よ。自己啓発みたいな演劇サークルで、思い切り喚く練習もしていることだし(オープニング。ランプリングが額に血管を浮き上がらせて叫んでいて、ギョッとします)。雇用先の息子は目が見えない。アンナに「頭を掻いてよ」といって甘え、手が離せないわと言いながら、アンナは子供の相手になる。撫でるようにやさしい手つきで、男の子の髪を掻きながら「昔、ある男の子がうっそうとした森をやっと抜けると、果てない砂漠が広がっていました。男の子は山の頂上から美しい湖を二つ見つけました。たたえた水はこの上なく清らかで、願い事をすれば叶うのです」▼アンナの行く先々で、これでもかと、暗い映像(地下鉄でわめく変な客とか)を流す監督ですが、この場面でアンナの心象を巧みに表象しています。「湖が二つ」という寓意がよくわからないけど、森の次は砂漠、なんてトラブル続きのアンナの現在そのものじゃない。でも願い事を叶える湖に出会うのだ。アンナは希望を捨てていないのよ。それというのも、夫がしばし別荘入りで、あんまり軽微な罪ではなさそうだから、独居生活が続きそう。やれやれ、いちいち手間と時間のかかる煮込み料理も作らずにすむ、フライパンにジュジュッと卵二つ落とした目玉焼きで充分。超手抜き料理の開放感は女でなければわからないだろう。独断的だと聞こえなければいいが、と幾分懸念しながら書くのだが、アンナは崩壊とは真逆の境地に至ったのである。映画の後半、演劇クラスでもアンナの演技は拍手で迎えられる。モチベーションが上がってきたのよ。夫は刑務所で相変わらず愚痴っぽい。面会の妻に「なぜ笑っている」笑っちゃいかんのかよ。「目をどうかした? 診察は受けた? 大丈夫?」妻は穏やかに聞く。「ここで生き抜く自信がない。おそらく移送される。やったと思われている」。そんなこと、アンナにとってはもはやどうでもいいに等しい、ということが夫にはまだわからない。けっこうやり手で残酷よ、この監督。男目線だと言ったけど取り消すわ。しこたま「どよよ〜ん」のシーンを見せながら、小さなピースをきちんとはめ込み「再生」を暗示するのね▼シャーロット・ランプリングとともに、2年か3年打ち合わせを重ねプロセスを煮詰めたといっていたわ。「ランプリングありき」だったと感謝していた。フランソワ・オゾンといい、本作のアンドレア・パラオロといい、古典となった「愛の嵐」のリリアーナ・カヴァーナといい、女優のインスピレーションから監督に映画を作らせるなんて、ランプリングってすごいと思うわ。劇中ちょっと脱がせすぎでは、と思ったことも笑ってすませよう。

 

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