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特集「ベストコレクション」

2019年12月13日

特集「令和の師走ベストコレクション」④ 
ビリーブ未来への大逆転(中)(2019年 事実に基づく映画)

監督 ミミ・レダー

出演 フェシリティ・ジョーンズ/アーミー・ハマー/キャシー・ベイツ

シネマ365日 No.3056

ルースの4分間

 本作は性差別撤廃への挑戦でもあると同時に、ギンズバーグ一家の家族物語でもあります。父親も母親も弁護士であり社会活動家。娘ジェーンは早い時期から女性に対する不当な扱いと、それと戦う両親を見て育ちました。ママは切れ者だけどひょっとしてアタマの理屈だけでは、という疑念が娘にはあったと思います。父親はそんな娘に言う。「良き妻、良き母になるのが女の使命で創造主の法」とされていた時代「お前のおばあちゃんが死んだのは、ママがお前の年だった。死ぬ直前までママと二人で本を読み、討論していた。全てに疑問を持てとママに教えたのだ。ママは意地悪じゃない。お前に自信を持ってもらいたい、そしておばあちゃんの教えをお前に伝えたいのだ。それがママの本心なのだよ」▼ある日ルースは娘を連れ、尊敬する弁護士ドロシー・ケニヨン(キャシー・ベイツ)に会いに上訴の件を話し協力を取り付けた。ドロシーはルースの手腕を認めながら時期尚早だという。「まだその時期じゃない。まず人の心を変え、次に法律を変える」。帰途は雨だった。「ママのヒーローは意地悪ね」とジェーン。「いいえ、素晴らしいわ。女性や公民権のため戦ってきた人よ。必ず勝ったわけじゃないけど。裁判の目的も依頼人も正しいのに、女性は100年も負け続けたの」「100年負けたからって今、負けるとは限らないわ」。たむろする若者たちが女性二人連れに絡んできた。「無視して」とルース。ところがジェーンは「そんなことならあんたのママに言ってやりな!」大声でかまし「無視したらダメなのよ、ママ」。ひるんでしまった男たちを見てルースは覚醒する。「素晴らしいわ、ジェーン。ケニヨンは間違っている。待つ必要などない。時代は変わったのよ。古い法律は時代に合わないと訴えるのよ!」社会も時代も変わっていく、人も法律も変わるのが自然だ。わが娘に新しい社会の勢いを感じたルースは、自分の方向性に自信を取り戻します。このワンシーン、とても印象的でした▼しかし味方陣営からも「100%君は負ける」とダメ出しをされる。男は仕事、女は家庭、何千年もそれで安定してきたアメリカの家族の危機だと被告側は論陣にもならぬ論陣で固めた。先例を山と集め、これが法だと主張するつもりだった。ルース側は模擬裁判で戦略を練ったが「人種差別は歴史を根拠に合法化されました」というルースの論拠は弱々しかった。教授であり秀才であっても、狡猾な論戦の取引で成り立つ法廷の経験は彼女になかったのだ。判事にとって女性とは抽象的な存在ではなく、家で料理する彼らの妻だった。相手側は和解を持ち出してきた。「ママは負けないわ。ライフワークを諦めるつもり?」と娘。「ルース、勝てるだろ」と夫。「メルたちは和解を受けるべきと…」ルース。「何を言っている。弁護士は君だよ!」娘と夫は弱気になったルースの尻を叩き、和解案を蹴り法廷に持ち込んだ。100ゼロで負けとされた勝負をルースはどう覆したのか。ミミ・レダー監督はぎりぎりネジを巻き上げ、ただその一点に焦点を絞り込んでいきます。敵側の圧倒的な優勢のうちに論戦は終始しました。「代理人は4分間の反論を」与えられます。次回、ルースの論述を全文掲載します。退屈だと思われる方は飛ばしてくださって差し支えありません。しかしルースの、法のもと人は平等であり、法とは言葉であり、言葉とは魂であり、魂とは愛であるという、ジュリストとしての思想が凝縮した4分間でもあったのです。

 

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