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特集「ザ・クラシックス」

2019年12月22日

特集「ザ・クラシックス7」③ 
毒薬(1951年 コメディ映画)

監督 サッシャ・ギトリ

出演 ミシェル・シモン/ジェルメーヌ・ルヴァ

シネマ365日 No.3065

悪女の逆襲 

特集「ザ・クラシックス7」

製作は1951年です。女がつくづくバカにされる長い時代が続いてきたのね。劇中のワルはどっちもどっちなのよ、夫と妻はお互いを嫌悪し、妻は殺鼠剤で夫の毒殺を企て、夫は妻を刺殺した後、正当防衛を主張して無罪を勝ち取るやり手の弁護士に弁護を頼む。神父に告解する夫ポール(ミシェル・シモン)の言い分はこうだ。「妻にはウンザリだ。存在自体が不満です。あの女が結婚したときと同じ女とは思えん。ワインは一日3リットルも飲まなかったし、腹を立てても皿は割らなかった。器量も悪い」。女房(ジェルメール・ルヴァ)が薬屋に行く。夫と妻は道ですれ違っても顔も合わせない。言葉もかけない。村人たちはある日神父の家に集まり、村を活性化させる案を出し合った。奇跡のような出来事が村に起これば、観光客が来て村は活性するというのだが…▼会話のない夫婦の食卓は、夫がラジオを付けっ放しにして沈黙を埋める。妻はワインをガブ飲みする。彼女は朝から飲むのである。計画通り、妻は夫のワインに殺鼠剤を入れ、夫は妻のお腹にナイフを突き刺した。ワインを飲んだ夫は苦しむが手当が早く助かった。殺人で起訴され無罪100件を勝ち取った弁護士を頼む。彼は殺人前に弁護士を訪ね、妻を殺したことにして殺人シミュレーションをこしらえていた。共犯に巻き込まれた弁護士は、実際の法廷で彼を弁護することになる。妻も評判の悪い女だったし、夫は事前に妻の不倫の噂を撒き散らしていたから、すべて夫に有利だった。しかし、不倫の相手として呼び出された男は「何もしていない。彼女は自分のタイプではないし」と噂を否定すると「あの女を相手に恋愛するか? 顔は醜悪で根性は意地悪だ」と、夫はいいつのる。あんまり夫が口汚ないので「あなた(の顔は)どうですか」と検察側が言葉を挟むが、凄まじい女の顔面攻撃に傍聴席は沸く▼いわゆる「美人はトク」を裏返した作劇が成り立つ時代だったのでしょうが、若くも美人でもない、不器量で品行も褒められたものではない女は、それだけで劣勢のうえ有罪である。陪審員は男ばかりで、夫は無罪放免。村の大事件のおかげで「殺人のあった家」は観光客が押し寄せ、村はめでたく活性化したという結末。才人サッシャ・ギトリの傑作として名高いが、途中で胸が悪くなった。ミシェル・シモンの妻を語る憎々しげな顔芸は超一級だ。妻の可愛げのなさも、悪意のこもった見下した態度も素晴らしい演技だ。結婚生活30年、破壊された家庭生活に絶望もせず、自分が埋没するより夫を殺してやれと決行する女なんてすごいと思うけれど。全面的に「女醜きは罪」にムカついた。これが1951年代だ。本作の尻尾はちょろちょろと、面白おかしく変形され、誇張され、さらに複雑に歪曲され、現代にまで延びるにいたっている。女は地下水脈でうっぷんを募らせていた。悪女の逆襲に脚光が当たってきた、ここ数年の傾向は故なしとしない。

 

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