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特集「令和の新春ベストコレクション」

2020年1月9日

特集「令和の新春ベストコレクション」⑨ 
ある少年の告白(上)(2019年 社会派映画)

監督 ジョエル・エドガートン

出演 ルーカス・ヘッジス/ニコール・キッドマン/ラッセル・クロウ/ジョエル・エドガー

シネマ365日 No.3082

トチ狂った「愛の導き」

令和の新春ベストコレクション特集

いい映画でした。 前半は同性愛の「矯正」「矯正」のオン・パレードです。同性愛者だと告白した息子ジャレッド(ルーカス・ヘッジス)を、父牧師マーシャル(ラッセル・クロウ)は施設「愛の導き」に入所させる。毎日9時に来て5時まで12日間、一定プログラムに従う。責任者サイクス(ジョエル・エドガートン)は厳格、というより異常な指導者です。「軽い握手以外、入所者の体に触れてはならない」「施設での情報を家族にも一切漏らしてはならない」「トイレは一人で行ってはならずスタッフが同行する」「日記は禁止」「ケータイも禁止」「女子のスカートは膝下、必ずブラ着用」。サイクスは入所者キャメロンを「生まれない方がよかった」などと侮蔑する言語道断の男だ。嫌気がさしたジャレッドはもう止めたいと父に訴えるが却下。牧師のパパは熱心な宗教家なのだけど、頭カチカチで、同性愛は教義に反する、矯正するのは本人の幸福のためだ、と信じているから始末が悪いわ▼ラッセル・クロウは役作りのためかどうか、見分けがつかないほど激太り、鈍重な父親にふさわしい外見で演じています。ジェレッドは一人でトイレに行ったことを見咎めたスタッフに「カマ野郎」と罵声を浴び、心底この施設が嫌になる。無理ないわ。矯正するものなんか何もないのに、治せ、治療だ、と無理強いするのだから。大学の医務室のセラピーの女性が「あなたは健康な10代の青年よ。世間ではいろんなことを言うけど、医学を修めた私から見ると、どこも悪くないわ。でもあなたのご両親が間違っているとは、言える立場じゃないの。今後のあなたは選択次第よ」とかすかに希望を与えます。キャメロンはサイクスのイジメの対象となり(彼はおとなしく、従順な子です)、悪魔払いのような儀式を施されます。見ておれなくなったジャレッドは退室し、ロビーに走るとケータイを取り返し「ママ、助けて。僕を迎えに来て」。やっぱりね、最後に頼むのは母親なのね。造反したジャレッドにスタッフたちが襲いかかる、そう言ってもいい手荒な行動です。突然キャメロンが巨体で体当たりし、妨害を阻止し、ジャレッドを逃してやる。彼はひとりぼっちで落ち込んでいるとき、ジャレッドが目立たないよう、肩に手を置いてくれたことが忘れられませんでした。施設を生き延びる方法として、入居者たちは自分なりに工夫していました。金髪の美少年、ゲイリー(トロイ・シヴァン)は「治っているフリをしろ。でないと長期入所になるぞ」。ジョン(グザヴィエ・ドラン)は、手を触れ合わないために挨拶には敬礼する。でもジャレッドは「大学を辞めてここで過ごした方が君のためだ」などと、とんでもない方向へ行かされようとして、半ば恐怖で切れてしまった。息子の一報で母親は容易ならぬ緊急事態を直感する。ジョエル・エドガートン監督の手腕への期待か、そうそうたる布陣です。音楽界とファッション界からラブコールの耐えないトロイ・シヴァン、カンヌの申し子グザヴィエ・ドランが、ちょっとした役で何気に登場するのも贅沢です。

 

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