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特集「令和の新春ベストコレクション」

2020年1月11日

特集「令和の新春ベストコレクション」⑪ 
天国でまた会おう(上)(2019年 社会派映画)

監督 アルベール・デュポンテル

出演 アルベール・デュポンテル/ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート/メラニー・ティエリー/ローラン・ラフィット

シネマ365日 No.3084

喪失した顔 

令和の新春ベストコレクション特集

主人公アルベール(アルベール・デュポンテル)の告白で始まる「長く複雑な話」は、彼の言葉通り長く複雑で、しかも卓抜なエンタテイメントです。第一次世界大戦の休戦間近の西部戦線。銀行総統の息子エドゥアール(ナウエル・ベレーズ・ビスカヤート)は、天才的な画才を持ちながら、ビジネスに役に立たん、とみなす父親に冷たく扱われた。母親は早く死にエドゥアールは姉マドレーヌ(エミリー・ドゥケンヌ)と厳しい父の元で育つ。出征するとき彼は父に「あかんべえ」をして屋敷を出る。激戦の戦場でもエドゥアールは上官や戦友の似顔絵を描く。エゴン・シーレを思わす独特のデフォルメだ。穏やかな気性のアルベールとウマがあった。プラデル(ローラン・ラフィット)中尉は休戦指示書を握り潰す戦争愛好者だ。休戦待ちで動こうとしない兵士の士気を高めるため、白昼に斥候兵を二人塹壕から放ち背後から撃って、味方がやられた「突撃だ」と命令するクズ男だ▼アルベールは味方を撃った男が中尉だとわかる。危うく中尉に殺されかけ、爆破で緩んだ土砂くずれで生き埋め、窒息死しかけたところをエドゥアールが助けてくれた。ところが彼は至近距離の爆弾で吹っ飛び、顎から下をなくす重傷を負う。病院で自分の顔をシャーレに写して見たエドゥアールは絶叫するが声も失っていた。「この顔で父親に会いたくない」エドゥアールは拒否。アルベールは戦死者の名簿を書き換え、エドゥアールを別人にしてフランスに送り返す。終戦、家族を捨て、しかもあの顔で仕事を得ることもできないエドゥアールを一人にできず、アルベールは狭い賃貸で一緒に住むことにした。エドゥアールは世捨て人だ。「絵の具を揃えたよ。絵を描けばどうだい」の言葉にも無反応。ある日近所の孤児のルイーズがお使いでエドゥアールの部屋に来て、不思議そうに彼を見る。大きなマスクで顔の下半分を隠していた。女の子の邪気のない好奇心に、エドゥアールはマスクを外す。ルイーズは怖がりもせずそっと頬を撫でた。エドゥアールは少女を抱きしめて泣く▼顔。人間の存在を語らしめる正面玄関。物語は変化に富むエピソードを綴りますが、基本にあるのは、エドゥアールが顔を失ったことによる自己喪失と、アイデンティティを取り返した方法です。その方法はとても歪んでいました。自分が元の自分でなくなった、それは戦争の負傷による、戦争を起こしたのは国だ、国と父に一泡吹かせる…なぜ父親も、なのか。国家経済をも動かす父は戦争を推進した国家の一員である。でもそれは表向きで心の中では、男として大きな存在である父に認めてもらえなかった寂しさと、孤独と敵意と愛がないまぜになっていました。

 

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