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特集「令和の新春ベストコレクション」

2020年1月12日

特集「令和の新春ベストコレクション」⑫ 
天国でまた会おう(中)(2019年 社会派映画)

監督 アルベール・デュポンテル

出演 アルベール・デュポンテル/ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート/メラニー・ティエリー/ローラン・ラフィット

シネマ365日 No.3085

復讐ひとつ成る 

令和の新春ベストコレクション特集

エドゥアールが考え出したのは記念碑詐欺です。国中も町や村で戦死者慰霊の記念碑建立計画がもちあがっていました。エドゥアールは完成図を何点も描き、一冊のカタログにして市町村に送った。制作希望者を募り、申込書と制作費を同時に受け取りトンズラする。善良なアルベールは反対しましたが、ある一件から意見を翻します。彼はしがないサンドイッチマンになって町を流していたところ、復員兵をバカにする連中が袋叩きにしたのです。戦没者には名誉を与え、命を的に戦った復員者は卑怯者のような目で見られた。その頃部屋にはエドゥアールが作るアートのような仮面がいくつも出来上がっていた。白塗りの妖女、月のしずく、装飾鉄仮面、マッドな科学者。彼は気分によって仮面を変え、ある時は朗らかに、ある時は傲慢に、いくつもの自分を演じ分け気を紛らわしていました。言葉を発せないエドゥアールのうめき声を、翻訳する少女ルイーズとアルベールだけが話し相手。エドゥアールは自分と仮面だけの世界に閉じこもっていきます▼アルベールが、エドゥアールが勇敢な兵士だったことを知らせた手紙を姉と父が読み、息子の最期を知りたいとアルベールをシャンゼリゼの目ぬき通りの豪邸に招いた。しょぼい経理マンだった彼が見たことも触れたこともない家具調度、晩餐のテーブルには銀の食器と何本ものキャンドル。ガツガツ料理を平らげる。父親は実直な性格を見てとり「うちの銀行も経理が必要だ。来てくれるなら破格の待遇をする」。彼は屋敷でもうひとつ肝をつぶした。戦争フェチの中尉プラデルは、エドゥアールの姉マソレーヌの夫、総裁の娘婿となり、戦没者墓地の経営者として不正を働いていた。エドゥアールはプラデルを葬ると決めます。今や彼の精神は暗黒の世界を飛翔しています▼外に一歩も出たことのないエドゥアールが「一緒に来てくれ」とアルベールとルイーズを伴って来た場所は年金省。功労者一覧の中から「勤務30年、昇進・褒賞と無縁」の男メルランを選ぶ。「よほどの頑固者か無能かだ」。世間では墓地建設事業の不正が噂になっていた。彼はプラデルの会社がクロだと密告した。それにより頑固一徹のメルランは現場視察に行き、プラデルが収賄によってデタラメの報告書をこれまでの視察官に書かせ、暴利を貪っていた証拠をつかみます。何しろプラデルは、10万フランを袖の下としてメルランにつかませたところ、彼は報告書にその札を一枚残らず貼り付けて告発したのです。復讐はひとつ成った。エドゥアールは姉が好きでした。母親を早く亡くした弟を不憫に思い、姉は弟の描く絵をいつも褒めてやっていたのです。一枚だけ手にした姉の写真をもとに、エドゥアールは美しい肖像画を仕上げます。魔女の奇異な、でも魅力的な仮面をつけたエドゥアールがロングのドレスをまとい、少女と手をつないで廊下を歩くシーンはわずか数秒ですが、無味乾燥な官舎を、メルヘンのような幻想に変えています。

 

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