女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「パイオニア・ウーマン」

2020年1月19日

特集「パイオニア・ウーマン」⑥ クレール・ドニ2 
ガーゴイル(2002年 社会派映画)

監督 クレール・ドニ

出演 ヴィンセント・ギャロ/ベアトリス・ダル

シネマ365日 No.3092

死に至る病 

パイオニア・ウーマン特集

医師のシェーン(ヴィンセント・ギャロ)は新婚の妻を伴いパリに飛ぶ機中。彼は終始うつうつとし、妻とセックスしようとはせず、抱き合って高まってくると洗面所に行って自分で処理する。妻は夫の秘密を知らない。パリではコレ(ベアトリス・ダル)がコンテナを止め、見ず知らずの運転手と行為に及び、妻の宿痾を知っている医師のレオが探し当てた時は、口の周りを血だらけにして、枯れ草の野にうずくまっていた。三人は元同じ研究所にいた。レオはシェーンの人体実験に反対で…多分それが元でコレが何かに感染したらしい、パリに着いてレオを訪ね、コレが重病だと聞いたシェーンが「すまない、僕のせいだ」と言っているから。レオとシェーンはエクスタシーに達すると相手を食い殺してしまうという難病に取り憑かれた。レオは研究所をやめ開業医となって妻の治療薬開発に専念する。普段部屋に閉じ込めているが、抜け出た妻は行きずりの男を誘い、殺してしまう。血だらけの体を夫に洗ってもらいながら「レオ、私は治らないわ。殺して」妻は力なく呟くのだ▼シェーンもまた悩んでいるが、ホテルのメイドにムラムラして付け回し、ロッカー室で殺してしまう。人間の口で陰部を噛みちぎり、喉、首、胸、腹と獣が襲うのと同じだ。彼がいうには妻は傷付けたくない。なんだって? 妻以外の女ならいいのか。女はたまったものじゃない。コレは監禁中、彼女に興味を持って侵入した近所の若い男を絶命させる。シェーンがコレに会いに行ったときは、コレが男を殺した直後だった。白い寝着を血だらけにしたコレが、忘れられた古い人形のように椅子に腰掛けている。誰かきた気配を察して階段を降りていく。マリオネットのようにぎこちない足取りは完全に生気を失っている。マッチをする。火を見つめるダルのアップ。常軌を逸した女を演じる女優は多いが、空恐ろしいまでに似合う女優は少ない。レオが家に急行したときはすでに炎上。炎の中で横たわる妻を見た。シェーンは逃れホテルに戻ってシャワーで体を洗っている。外出から戻ってきた妻を抱き寄せ(妻は夫の大学時代のルームメイトから、夫の病気のあらましは聞いた)「うちに帰ろう」「そうね」。そこでエンド。おいおい、じゃ何かい、女は自死して決着をつけ、男はアメリカに帰国し医師として働き、その場、その場で女を食いちぎって生きていくのかい▼シェーンがパリで訪問した研究所の所長は「研究者としての信念は?」と尋ね「あなたは莫大な利益に目がくらんだ。急いで大金に走りレオの研究を盗んだのよ。ここからでて行って!」追い返していた。レオが妻の治療薬開発に努力する誠実な医師であるのに比べ、シェーンは倫理観に問題があった。コレもシェーンも「死に至る病」だ。生きていても絶望しかない。クレール・ドニ監督は一人を死なせ、一人を生き延びさせようとする。彼女からすれば、シェーンのように、どんなに逸脱行為を繰り返す非社会的人間でも、生きる価値はあるらしい。しかしながら彼女の世界観とは無関係に、絶望を知ったコレと、根拠も意味もなく、理不尽に惨殺された若いメイドに、深い哀切と怒りを覚えるのは私だけか。

あなたにオススメ