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特集「最高のビッチ」

2020年2月8日

特集「最高のビッチ10」⑧ ヴェラ・ファーミガ1 
ベイツ・モーテル最終章(上)(2017年 テレビ映画)

製作総指揮 カールトン・キューズ

出演 ヴェラ・ファーミガ/フレディ・ハイモア

シネマ365日 No.3111

二人のONE TEAM

特集「最高のビッチ10」

 ついにファイナル。高品質を保ちながらシーズン1〜5を足掛け5年に渡り、走り続けた製作・俳優陣の心意気にまず拍手。本シリーズが発表されたとき、製作陣は「サイコ」のリメイクを作るつもりはなく、最重要人物はノーマ(ヴェラ・ファーミガ)であり、サイコ・サスペンスの形をとったラブロマンスであると明言していました。全シリーズを「通し」で見て、改めてその感を強くしました。本作のラストの回想シーンなど、まったく胸に迫ります。本作は手短に言えば、一組の母親と息子がいた、母は精神疾患を持つ息子を危惧しながらかばい、息子は、レイプに次ぐ家庭内暴力と、辛い家庭環境で自分を守ってきた母親が最愛の女性となった。夫が死んで保険金の入った母ノーマ(ヴェラ・ファーミガ)は郊外にモーテルを買い、息子と二人経営にあたり、新しい人生が始まった。母は料理がうまく食事は楽しく、二人だけの家でレコードをかけ、陽気な母と一緒に踊るノーマン(フレディ・ハイモア)には、心を暗くする影一つなかった▼母親はしかし、いつノーマンの病気(一時的な精神喪失)が発症するかの怯えを隠していた。感受性の強い子だから刺激に敏感に反応する。最大の刺激は女性とセックスだ、と母は思う。自分に暴力を振るう父親を幼少のノーマンは殺した。息子は息子で、母親は自分が守ってやらねばと信じる。彼らは背中を合わせて外敵に立ち向かう、たった二人のONE TEAMなのだ。お互いがお互いを支配し、支配される共依存の関係は、それなりにバランスをとっていた。ノーマンが思春期を迎え、女性に関心を持ち自我が強くなってくるとそのバランスは崩れた。全シーズンを通じてノーマンは5人を殺します。最初は彼に近づいた高校の女教師、次は初体験の同級生、ノーマンを好きだった難病の女性、エマの母親(オードリー)、本作でガールフレンドとなったマデリンの夫サム、そして母と結婚した保安官ロメロ。言い換えれば本シリーズはノーマンの殺人の歴史であり、彼が夜の世界に滑り込んで行くプロセスです。重病の子を抱えた母親が(この子より先に死ねない)と思うのと同じ悲しみがいつもノーマにはあって、それが再々「私の役目はあなたを守ることよ」というセリフで語られます▼しかしノーマにしても頼り甲斐のある大人の男にいてほしかった。ロメロとの結婚は偽装とはいえ、ノーマンを保護施設に収容するためであり、それを知ったノーマンは母親と無理心中しようとして自分だけ生き残った。母親のいない現実に耐えられず、ノーマンは遺体を掘り返し、家に連れ帰り、地下室に隠して二つの人格を生きることになります。ノーマンが異常であることを周囲の何人かは知っています。隣人のチック、兄のディラン、ロメロ。しかし弱々しく母親に、というより自分が思うイマジネーションの母親に頼り切っていたノーマンは、好青年の印象を利用して次第に狡猾に暴力的になり、母親を退け、退けたかと思えば呼び戻して許しを乞い、一人二役の会話を続けます。でも真実は悲劇だった。それはノーマンが自分は狂っていると気づいた時に始まります。ノーマが(もちろん彼の妄想の中の彼女が)「私はあなたの前に二度と現れない」とノーマンに告げた、つまり母親はもう実在しないとノーマンがわかったのです。

 

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