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特集「ベストコレクション」

2020年2月12日

特集「春息吹く2月のベストコレクション」① 
ホワイト・クロウ(2019年 伝記映画)

監督 レイフ・ファインズ

出演 オレグ・イヴェンコ/アデル・エグザルコプス/ラファエル・ペルソナ/セルゲイ・ポルーニン/レイフ・ファインズ

シネマ365日 No.3115

たぐい稀なる人物 

特集「春息吹く2月のベストコレクション」

レイフ・ファインズ監督という人はよほど律儀で几帳面な人に違いない。長年温めていたルドルフ・ヌレーエフが亡命を決めたパリでの5週間を、一点一画おろそかにしない楷書体で精確に描くのだ。彼が汽車の中で産まれた、幼年時代に民族舞踊を習った、母親がたった一枚のチケットで家族5人が見たオペラが一生を決めたなど、重要なエピソードもきっちり入る。「伝説の」が枕詞に着くヌレーエフとは性格の難しい人物で、努力家ではあるが人を人と思わない態度言行が周りの人を不愉快にさせ、管理社会のソビエトで監視の対象となる。憧れのパリは彼が生まれて初めて見る国外の文化だ。門限や団体行動を無視してフランス人ダンサーたちと交流し、ルーブルに行き、ソ連ではエルミタージュ美術館の「レンブラントの間」で恍惚とする▼彼の感受性の鋭さや豊かさを引き出したかったのだとは思いますが、こんな自分勝手な男がそばにいたら、女は、上司は、辟易すると思える言動がたっぷりある。つまらないことですぐ切れる。フランス人ダンサーとの交流会で知り合ったクララが、レストランに連れて行くと、料理のソースが気にいらないと怒り出す。ロシア料理店だからロシア語が通じる、自分で言えばとクララ。「君が言え。あのウェイターは僕が田舎者だと思ってバカにしている。クソくらえ。あいつもパリも君も」と思うと足首を骨折し、2年は踊れないと言われた彼を、自宅に引き取って看護したプーシキン教授(レイフ・ファインズ)の奥さんと関係を持つ。彼女の方が積極的に手を出したのですけどね。プーシキン教授とはヌレーエフが逆指名して門下に入った教授です。「君は何のために踊る? 逃避か。技術とは手段で最終駅ではない。どんな物語を語りたいかが踊る目的だ。みんな語ろうとしない。私は何を語りたいのかと」。教授の哲学的な示唆を彼がどう理解したか、彼のバレエを通じては、少なくとも私にはよくわからなかった。彼のあだ名「白いカラス」とは「類い稀な人物もしくははぐれ者」の意味▼その通りの傑出した技量の若者だったに違いない。でもダンスシーンは「セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」のほうがシャープで美しかった。主役のオレグ・イヴェンコも現役のプリンシパルですからとびきりのダンサーなのですが、セルゲイに比べいかつく、もっさり感が否めない。フィジカルな面で損をしたと思います。そのセルゲイがヌレーエフと同室の生徒役で出演している。ヌレーエフのベッドの隣で、金髪で全裸、引き締まった背中、コリコリしたお尻の半分がシーツからポコッとはみ出して…こっちのほうが刺激的でした。出国時ヌレーエフだけが「フルシチョフ書記長の前で踊る」ことを名目に帰国を命じられる。収容所送りに決まっている。ヌレーエフは恐怖で凍りつき、見送りに来ていたパリのダンサー、ラコット(ラファエル・ペルソナ)に子猫のようにすがりつく。ラコットはクララに連絡を取り、急遽駆けつけた彼女が空港警察の警官にヌレーエフが亡命希望者だと教える。アップテンポの急展開でヌレーエフは亡命成る。人のおかげに感謝することが少しはわかったかしら。伝説のすごいダンサーだと納得する前に、この人がそんなにすごいダンサーだったの? と思ってしまった人物像が、監督の力作に対してちょっと残念。

 

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