女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「ベストコレクション」

2020年2月13日

特集「春息吹く2月のベストコレクション」② 
ザ・バニシング-消失(上)(2019年 サイコ映画)

監督 ジョルジュ・シュルイツァー

出演 ベルナール・ピエール・ドナデュー/ヨハンナ・テア・ステーグ

シネマ365日 No.3116

善き人、普通の市民 

特集「春息吹く2月のベストコレクション」

初公開から31年後に日本公開になった映画。サイコ・サスペンス映画史上ナンバー・1という絶賛の触れ込みです。オランダから南仏へ車で出かけた夫婦、夫アレックス(ベルナール・ピエール)と妻サスキア(ヨハンナ・テア・ステーグ)。立ち寄ったサービスエリアで飲み物を買いに行った妻がそのまま失踪して3年。彼には現在交際中の恋人リネカがいる。3年もたって妻を探し始めたのは「夢を見たからです。妻が僕に話したのと同じ夢を。二人は金の卵に閉じ込められ宇宙で遭遇する。妻は二つの卵が出会った時すべてが終わると言っていた。きっと何かのサインです。捜索を諦めないのは消えた恋人への敬意です」。オカルト映画なの? 少なくともアレックスは、目に見えないものに魅かれる体質が強いのね。これが犯人ルモンの説く、妖しげな彼の持論にたぶらかされる一因になったと思える▼ルモンは化学の教師で、妻と娘が二人。「パパ、女の子が溺れている!」と娘が叫べば橋から飛び降り、救出する善き人だ。彼は山荘を所有している。妻は「浮気用?」と勘ぐるが浮気ならまだ救いようがある。女性の拉致誘拐のための隠れ家だ。彼の言い方では「あの山荘は私の情熱だ。没頭することを楽しみ、深い満足を覚える」。アレックスはテレビで犯人に呼びかけた。「犯人がこのテレビを見ていたら会いたい。恋人の身に何が起こったか知りたい。君を憎んでいない。起きたことは受け入れる。ただ知りたい」。この人もおかしいわね。受け入れる? とっくに殺されたとわかってはいるつもりでも、真相を知りたいのね。リネカは現実的です。サスキアは殺されている、でも捜索にのめり込むアレックスを口出しせず我慢強く付き合うよくできた女性です。犯人から手紙が来るようになり、どこそこで待てと日時を指定する。現場で待つ。何も起こらない。「行きましょう」とリネカ。「奴は見ている。気配を感じる」失踪した女が依然として心を占めている男に、女は愛想を尽かして去る▼憎むべきはサイコ男の犯人ルモンだ。アレックスの前に姿を現した彼は「真相を教える」とアレックスを車に乗せ、国境を超えたら「全て話す」。その内容はこうです「君は私を殺す権利がある。それでも会いに来た。何があったか知りたいだろ。16歳の時ある発見をした。ベランダに腰掛けて下を見た。普通は考えるだけで飛び降りない。だが私は飛び降りることを想像したのだ。それなのに飛び降りないのは“当然”か。逆らうためには飛び降りるしかない。そこで飛び降りた。左腕を骨折したが私は満足だった」。なに言ってンの、このオッサン。アレックスはルモンが狂っていると決断し、足元の明るいうちにオサラバすべきだった。ところが飲み込まれちゃったのよ。かわいそうに。もともと彼の「訳のわからないものに魅かれる」体質が裏目に出たとしか思えない。でも対象が悪かった。究極の異常者は何も、どこもおかしくない「普通の市民」だった。アレックスはまんまと犯人の饒舌に絡め取られてしまう。

 

あなたにオススメ