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特集「ベストコレクション」

2020年2月18日

特集「春息吹く2月のベストコレクション」⑦ 
アリー スター誕生(2018年 恋愛映画)

監督 ブラッドリー・クーパー

出演 レディ・ガガ/ブラッドリー・クーパー/サム・エリオット

シネマ365日 No.3121

大好きよ 

特集「春息吹く2月のベストコレクション」

「スター誕生」とはいうものの暗い映画ね。この陰気な作品がアカデミー賞の候補にずらずら並ぶなんてどこがよかったのかしら。女性はアリー(レディ・ガガ)のサクセスに、男性は彼女を支えたジャック(ブラッドリ・クーパー)の献身が身につまされたのでは。主人公はアリーよりむしろジャックです。ジャックが妻の成功に嫉妬し、栄光の日々も今は何処、酒に溺れ、依存症克服のため施設に入所するも、その間に世間からも業界からも忘れられ、ガレージで首を吊って自殺する。人生の落伍者として描かれますが、そうじゃないと思うよ。彼が死を選んだ理由は、もともとハンディのあった聴力がさらに衰え、完全に「耳」を失う日は遠くない。ミュージシャンとしてやっていけなくなった絶望からで、女房云々は副次的な理由に過ぎない。仲のいい夫婦だったし、ジャックは繊細で男らしく自分の最大の苦悩に耐えていた。アリーもちょっと天然のところはあったが、根本は感受性の豊かな、才能ある女性だった▼ジャックを慰めるのに、ベートーベンは聞こえなくなっても偉大な曲を作った、なんて引き合いは無駄よ。ベートーベンは作曲でよかったが、彼はステージに立たねばならなかったのだから。ジャックは自分の耳のことを妻に言わないのね。アリーも耳にハンディがあるとは知っていたが、失聴寸前だとは思っていなかった。ジャックは最大の弱みを妻に打ち明けようとしない。自分の余命を知ってなお、命ある限りリングに立つボクサーみたいで、彼のストイックな生き方に男性たちはしびれる。女性だと「バカなやせ我慢やめて。すぐ治療しなきゃ」と「100人の名医」などをパパッと検索して連れて行く。女は現実的なのであります。ミュージシャンとしての絶望が、妻のサクセスの対極にあったことが真の悲劇です▼ガガは左腕にリルケの一文をタトゥーにしている。「若き詩人への手紙」の一節で、「自分が詩人であるかどうかは自らに問うてみたらよい。書かずにはいられないか、生きていけないか」。ガガはいつも自分に問いかけているわけだ。「歌わなければ生きていけないか。歌うことができなくなれば死ぬか」。たぶん、ジャックもそうであったろう。歌うことができなくなったから彼は命を絶ったのだ。妻なら、同じミュージシャンなら彼の気持ちはわかったはずだ。映画はこここそをガガに演じ切らせてほしかった。ガガの月並みな話題はイヤという程ある。月額225万円の賃貸マンションには、ツアーの連続でほとんど帰る時がないとか、稼ぎは多くても出費が多いとか、奇抜なメークやステージ衣装で話題を集めるけど、彼女は多くの海外スターが放射能汚染を懸念し、次々キャンセルするなか、東日本大震災直後の日本に4回目の来日を果たした。福島県庁から伝統工芸品「起き上がり小法師」と感謝状を贈られ「日本への愛は無償のものだからこういうものは要らない。でも一生大事にする」と言って泣いた。ステージに立つアーティストとしての真摯な志や、情のある直情径行な彼女が大好きよ。

 

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