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特集「B級映画に愛をこめて」

2020年2月23日

特集「B級映画に愛を込めて13」③ 
殺しのセレナーデ(2001年 ホラー映画)

監督 ペドロ・L・バルベロ

出演 シルケ

シネマ365日 No.3126

無知は死を招く 

特集「B級映画に愛を込めて13」

スパニッシュ・ホラーにしてはおとなしい映画です。「アザーズ」のような傑作ではありませんが「スペイン一家監禁事件」のような不快な映画ではない、「REC/レック」みたいに強引なラストでもありませんし、「ザ・チャイルド」のおぞましさもない。中途半端なのかというと、そうでもなく、ツボを押さえたまともな映画です。「殺しのセレナーデ」というB級丸出しのタイトルにも、微笑ましいものがあります。キャンパスで起きる連続殺人の謎を解くという学園ホラーの定番ですが「無知は死を招く」なんて、「知は力なり」の裏版か…そんなセンスがうかがわれます。思いませんか。思わない? あ、そ。ともかく、登場する大学生たちとくると、カンニングはやる、女の子は追いかけまわす、女の子はイケメンに熱を上げる。それがごくフツーの学生たちの、明るいキャンパスライフとしてサラサラ描かれていきます▼犯人はネットで「闇の詩人」と名乗り、殺人予告した人物を順番に血祭りにあげる。殺し方は主に刺殺です。殺したあと天井から死体を吊るすとか、まずトイレで殴りつけるとか、かなり暴力的ですが、血潮がドバーと吹き上がる獰猛なシーンではない。もちろん警察も捜査に乗り出すが、刑事の一人ヴィクターは女子大生アレックス(シルケ)に恋してしまう。アレックスはカンフーの達人でして、ジムで相手をしたヴィクターより強い。で、彼らのベッドシーンは、刑事がまずアレックスに手錠をはめてから、安心して(?)セックスに没頭するという、笑えない設定になっています。アレックスは事件の連鎖に異端審問古代史が関係しているとみて、教授兼司祭のフストに頼んで教会の礼拝堂にある壁画を見せてもらう。アレックスはサンドラという下級生を助手に、礼拝堂の壁画とにらめっこして謎解きをしようとするのですが…。ついに殺人予告はアレックスとなった▼犯罪心理を専攻するトラウトが闇の詩人の犠牲になった学生の共通項を発見する。犠牲者は複数の大学にいたが、殺されたのは下位の3人である。つまり遊んでばかりいて試験に落ちた落第組だ。犯人は知的欲求の強い勉強好きで「無知は死を招く」ことを行動で示している。魔手はアレックスに及んだ。でも殺されたのは作業中のサンドラで、アレックスと間違われたのだ。学長夫人といい仲になって解答用紙を手に入れ、カンニングばかりしていた陽気な学生エドゥも、捜査に協力したトラウトも殺された。現場から逃走する「闇の詩人」を教会に追い詰めた刑事に詩人は仮面を脱ぐ。それはアレックスだった。アレックスは教会に火を放ち逃走した。ヴィクターは死体置き場で黒焦げの焼死体を「アレックスだ」と証言する。「こんな状態でよく判別できるな」と上司は言う。彼が示す資料には、アレックスに家族はおらず麻薬の前科があった。彼女は最初からみんなを騙していた。「この女の死体が出れば誰も彼女を追わない。闇の詩人と同じく亡霊になる。ヴィクター、女を探すのか」「事件は終わったのさ」捜査は打ち切りとなる▼司祭はアレックスが贈り物だとしておいていった箱を開けた。小切手と手紙があった。「大聖堂を再建して闇の詩人の伝説を壁に彫ってください。私は大学を浄化しただけ。知識を得るという特権を社会は凡人に与えた」。アレックスの過去はわからない。ある日大学に転校してきて寮に入り、アカデミックな服装が好きで講義にはきちんとジャケットを着て出席。ジムで数時間からだを鍛える規則正しい毎日。孤児だった。生計のため様々な仕事につく。奨学金とアルバイトで学費を捻出した。彼女から見れば親の金でのうのうと大学に来て遊んでばかりの連中は唾棄すべき存在だったのだろう。大学は堕落した。浄化とは知を愛するゆえの粛清か。合点するには無理があります。アレックスを演じたのがスペインの国民的女優といわれるほど、人気のあるシルケですから、えげつない狂気の度合いは薄められていますが、彼女なりの「筋の通し方」をおし進めていくと、やはり本作は伝統のスパニッシュ・ホラーの血族です。

 

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