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特集「B級映画に愛をこめて」

2020年2月27日

特集「B級映画に愛を込めて13」⑦ 
罪の余白(2015年 社会派映画)

監督 大塚祐吉

出演 内野聖陽/吉本実憂/谷村美月

シネマ365日 No.3130

チャチな「悪魔」 

特集「B級映画に愛を込めて13」⑤

男手ひとつで育てた一人娘・加奈が学校のベランダから飛び降りて死ぬ。警察は事故死とした。父親安藤聡(内野聖陽)は、行動心理学の専門家でありながら娘の内面に気づかなかったと自分を責め、酒浸りになる(内野聖陽が抜け殻のようになった父親を好演)が、どうにも納得いかない。娘に何が起きていたのか。級友に木場咲(吉本実憂)がいた。頭が良くて綺麗だが、意地悪で人を貶める性格ブスだ。同級の新海真帆は咲を崇拝している。人の心を操りたい咲は加奈に近づき、近づいたと思ったら遠のけ、しょんぼりしているとまた近づく、というふうに弄ぶ。加奈の日記には「お母さんの形見の財布が盗られた。咲と真帆の仕業だと思うが、いうとややこしくなるので黙っている」「せっかくお父さんが作ってくれたお弁当(毎日娘に作ってやる)に虫が入っていた」「咲に死ねと言われた」「咲と真帆に誘われクラブに行ったがひとつも楽しくない。もう疲れた」▼ベランダの一件にしても、咲がそそのかし、冗談みたいに加奈が手すりに上がってクラクラして足を踏み外したのだ。「加奈が自分でやると言ったのだから、うちらは関係ない」と咲。気の弱い真帆は「警察に言って全部話そうよ」。咲の「悪魔ぶり」が手を変え、品を変え描出されるのですが、それが成り立つのは高校という学園の中だから。咲が新入社員だとしたら、世間知に長けた女子社員に見破られ「綺麗で口が上手いだけで採用した面接官ってつくづくバカね〜」よ。女優志願の咲が面接を受けた芸能プロダクションの社長は「彼氏は? いない。友達は? いない。人を演じる上で、友達とか彼氏とかがいることは大切なことや(なぜか大阪弁)。映画、やりたいというが、君は映画と同じくらい価値があるのか。歌はイヤ、舞台はイヤ。テレビはイヤ、そんな奴はいらん。君くらいのルックスははいて捨てるほどおる。何も特別ではない。イヤなら他の事務所、あたり」と鼻柱をへし折って追い返しているじゃないですか▼でも父親はそうはいかない。咲と真帆を付け回し、刑事やら児童相談所の担当者やらに「二度とこんなことしたら云々」と引導を渡されるが「証拠さえあれば逮捕できるのですね」と謎のようにつぶやく。彼はきっぱり酒をやめある夜咲と真帆を自宅に呼び寄せ「あの日何があったか話してくれ」「私たちがイジメの張本人なのですか。加奈に問題はないのですか」「何で加奈を死ぬまで追い詰めた。警察もダメ、学校もダメなら新聞社に話す」。咲は慌てる。プロダクション入りにスキャンダルはご法度だ。父親の口を封じなければ。ケータイを取り出した父親を咲はベランダから突き落とす。父親は電話すると見せかけ、カメラに切り替え、突落しに来る咲を撮っていたのです。転落したものの重傷で助かった彼は大学に復帰、咲は少年鑑別所入り。山本美月が父親の同僚の、かなり天然の講師を演じています。せっせと料理を作って持ってくるのですが、安藤の箸が進まない。「私の料理、美味しくないですか」安藤が頷くと料理学校に通い出すという純情ぶりです▼咲は刑期満了で実社会に出て、当面うまくやっていくだろうけど、男はともかく、女はこんなやつに引っかからないわよ。真帆は可哀想に「あなたがいたから今の私がいる。これが終わったら二人でディズニー・ランドに行こうね」なんて咲に甘いこと言われ、キスまでされて丸め込まれたけど。こいつ、どこかおかしい、と咲の精神的畸形を直感して、本ばかり読んで相手にしなかった笹川七緒が異色。上滑りしそうな学園モノに、力強い現実感を与えた内野聖陽の父親像に一票。

 

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