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特集「異形の美術館」

2020年3月14日

特集「異形の美術館2」④ 
キャット・ピープル(1982年 ホラー映画)

監督 ポール・シュレーダー

出演 ナスターシャ・キンスキー/マルコム・マグダウェル/ジョン・ハード

シネマ365日 No.3146

黒豹のために泣く 

特集「異形の美術館2」

太古の赤い砂漠から始まる幻想的なシーン。枯れた巨木に黒豹が寝そべる。木に縛り付けられた少女に黒豹が近づく。牛をも一撃で倒す太い前脚だ。翌朝黒豹は洞窟の台座に寝そべり、少女を見つめると真っ赤な口を開き、舌を巻き上げる。少女はのちにこの夢をよく見る。シーンは一転、現代の空港。アイリーナ(ナスターシャ・キンスキー)は4歳の時に別れた兄ポール(マルコム・マグダウェル)の出迎えを受け、ニューオリンズに来た。兄妹は猫族の末裔だ。兄によれば「僕らの先祖は生贄として子供を黒豹に捧げた。その魂は黒豹の体内に宿り、豹を人間に変えた、我々は神であり近親相姦の種族だ。両親も兄と妹だった」。両親はサーカスの団員だった。ポールは子供の頃から動物と一緒に育った。両親は幼い息子と娘を残し銃で自殺。子供たちは孤児院に引き取られ、十数年ぶりで再会したわけ▼大都会に現れたアイリーナの周辺で奇怪な殺人事件が頻発する。警察はポールの家の地下室に檻があり、3〜4体分の骨と肉片が散乱し、死体の局部が引き裂かれている魔窟のような現場を発見する。ポールは動物園の園長オリバーと助手のアリスに射殺された。「34年の人生で初めて愛する人に出会った」とオリバーは告白するが、アイリーナは受け入れられない。猫族はセックスによって黒豹に変身し、人間に戻るには誰かを殺さねばならないのだ。オリバーはアイリーナの正体がわかっているが愛さずにおれない。苦しくなったアイリーナもまた失踪する。兄のポールは殺されたが、オリバーが黒豹を解剖していると、太い人間の腕が黒豹の腹からヌッと出て、白い煙と共に黒豹のボディは溶けてしまった。わけわからんがそうなる。アイリーナはオリバーが忘れられず戻る。オリバーはアイリーナの両手両足をベッドに縛り付けセックスに及ぶ▼で、どうなったか。動物園はその日も平和で、オリバーとアリスが檻の中の動物たちを観察して回り、二人は食事の約束をして別れる。オリバーはある檻で立ち止まる。中には見事な黒豹が目を光らせていた。オリバーは干し肉を手ずから与える。黒豹はくちゃくちゃと美味そうに食う。アイリーナは黒豹となって檻の中にいた。彼女はここで一生を終えるのだ。飼い殺しである。幻想も寓話も監督が意図したところの神話もヘチマもあったものではない。オリバーは崇拝する運命の女を檻に閉じ込め我が物とした。こんな都合のいいオチがあるだろうか。黒豹とオリバーに対等なアイデンティティを与えないところが、旧態依然の力関係じゃないですか。野生を封じ込めた黒豹と、猫族の神秘なパワーを閉ざされ、あてがい扶持の餌で生きて行くアイリーナの情けなさがひたひたと押し寄せた。黒豹のために泣こう。黒豹と同じ、能力を封じ込められてきた女性のためにも泣こう。

 

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