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特集「異形の美術館」

2020年3月15日

特集「異形の美術館2」⑤ 
マニフェスト(上)(2019年 社会派映画)

監督 ユリアン・ローゼフェルト

出演 ケイト・ブランシェット

シネマ365日 No.3147

ケイトの独演 

特集「異形の美術館2」

ケイト・ブランシェットという人、時々哲学的メッセージを込めた作品を選びますね。「聖杯たちの騎士」「ボヤージュ・オブ・タイム」とか、高邁にして清廉。地球、社会、歴史という複雑かつ普遍のテーマに。どっちも全然面白くなかったけど。でも本作は違います。「共産党宣言」「シュールレイリスム宣言」など有名なマニフェスト(宣言)をケイトがホームレスの男、株のトレーダー、ゴミ焼却場のシングルマザーの貧しい作業員、葬儀屋の女性レセプショナー、上品な家庭の主婦、科学者、パンクなロッカー、パーティー主催者、振付師、人形師、ニュース・キャスター、小学校の教師となってパフォーマンスします。一方的な独白が続くので辟易しますが、それを救うのがケイト姉御の情熱的、独断的、専横的、そしてユーモラスな異形の一人芝居。もう一つ、映像がとても綺麗です。特に冒頭の廃墟に現れたホームレスが絶叫するシーンの、背景が詩的なまでに美しい。そこは冷戦下の旧ベルリンにある、通称「悪魔の丘」と呼ばれた120メートルの人工丘。その上に建てられた、米国国家安全保障局(NSA)のレーダー基地跡、つまり廃墟です▼どの宣言も挑戦的で革新賛美です。その中から傑作だと思うのを三つ。一つは平凡な家庭の食卓。主婦が子供たちを呼ぶ。「さあ、食べましょう。昼食の準備ができたわ。いらっしゃい。パパは?」子供「知らない」「先に始めましょう」主婦は夫の不在を意に介せず祈りを捧げる。「私が好きなのは政治的でエロティックで、神秘的で、美術館に鎮座しないアート。芸術とは知らずに近代化したアート」。ご存知とは思いますが、クレス・オルデンバーグ(1929生、アメリカのパブリック・アート彫刻家)のテクストの冒頭です。彼女の祈りはいつ終わるとも知らず続き、子供たちはあくびをかみ殺し、席に着いた旦那は手持ち無沙汰。ケイトだけが没我状態で祈り続ける。この章の芸術運動はポップアートです。1960年代のアメリカを席巻した潮流が、アンディ・ウォーホールらのスターを生み出しました。大量生産された工業製品や大衆受けするコミックからの大胆なイメージを流用し、その背景には戦後急速に発達した大衆消費社会があります▼文字で書けばソッポ向きそうな退屈なセリフにしかなりませんが、監督は一つ一つのシーンをケイトに任せ、ケイトがセリフと状況に肉体を与えています。そのつくり込み、というか、早い話、ケイトの独演が面白いのです。

 

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