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特集「ザ・クラシックス」

2020年3月25日

特集「ザ・クラシックス8」① 
夜と霧(上)(1961年 ドキュメンタリー映画)

監督 アラン・レネ

シネマ365日 No.3157

ありふれた村で 

特集「ザ・クラシックス8」

「夜と霧」とは1941年、ヒトラーが発したいわゆる「総統命令」の一つです。彼が愛聴していたワグナーの「ラインの黄金」に登場人物が「夜と霧になれ、誰の目にも映らないよう」とつぶやく呪文から取られました。誰にもわからぬよう、夜と霧のようになってこの命令を遂行せよという意図か。ナレーションはミシェル・ブーケが受け持ちました。「黒衣の花嫁」「暗くなるまでこの恋を」「ボルサリーノ」などの出演作があります。ナレーションは是非彼にという監督の強い要望がありました。この映画の感想…と思うだけで無力を感じますので、叙述された映像と語りに沿うだけにとどめます。それが本作を伝える唯一の方法と考えますので。「静かな風景である。カラスが飛び畑には野焼きの煙がたなびく。ひなびた街道のすぐそば、楽しげなリゾート地の隣に妖精収容所があった。アウシュビッツ、ベルゼン、ダッハウなどどれもありふれた村だった」▼収容所の後は雑草に覆い尽くされています。「1933年。機械的な行進、一糸乱れぬ行動、全国民が協力する。収容所建設に業者が群がった。ワルシャワで、プラハで、ブリュッセルで彼らは各地で一斉検挙され貨車に乗せられ収容所へ。手違いや偶然でリストに載り収容所行きとなった人々もいた。鍵をかけ封印した列車に飢えと渇きが襲い、窒息と狂気が迫る。必死の落とし文。死者も出た。夜、霧の中でも輸送は続く。平和になった今、同じ線路をカメラは捉えるだろう」「衛生上の名目で裸にされ屈辱に耐える。丸坊主。刺青。分類。不可解な序列。青い縞の服。服により“夜”と“霧”に分類される。赤い印は政治犯だ。序列は緑が赤の上。その上はカポ、ドイツ人の刑事だ。さらに上に親衛隊がいる。頂点は所長だが不正には無関心」「木造の宿舎には3人用の寝台がある。急いで食べ怯えて眠る獣の巣のようなねぐらだ。粗末なわら布団。人々は毛布を奪い合い各国語で罵り密告する」▼レンガ造りの大屋根の建物の見かけは真実から遠い。「納屋や作業所や馬小屋。だだっぴろい荒地。無関心な秋の空。点呼と検査。シラミに中断される眠り。盗まれた服を探す者もいる。朝、楽隊の行進曲にのって労働に向かう。雪の中で働き8月の猛暑の中でも働く。この階段建設で3000人が死んだ」「生きる執念が食事に表れる。スープをひとさじ余分に飲めば、ひとさじ分命が延びる。弱者は襲撃され、自分の配給を守りきれない。泥に埋められるのを待つ。どこで最期を迎えるのか。これが便所だ」そこは床に穴が空いているだけ。その穴が何十と並ぶ。だがここは情報交換所でもある。恐怖の中で抵抗組織が結成された。収容所の標語は「清潔すなわち健康。労働が自由を生む。義務を果たせ」。孤児院は出入りが激しい。監視塔に隔てられた世界は絶え間なく見張られ、時には暇つぶしに殺される。「シンドラーのリスト」にも狂った将校が囚人を標的にするシーンがありました。長時間の点呼は全裸でならばされる。骨と皮に痩せ、肋骨は飛び出し手と脚は棒のようだ。「不当な殴打。目立ったことをすれば絞首台が待つ。ブロック11の庭は外からは見えない。高い塀のある銃殺場だ」。書いているうちに息が苦しくなる。読むほうもたぶんそうだろう。

 

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