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特集「ベストコレクション」

2020年4月10日

特集「スピカは昇る、初夏の星座のベストコレクション」① 
シンク・オア・スイム(上)(2019年 事実に基づく映画)

監督 ジル・ルルーシュ

出演 マチュー・アマルリック/ギョーム・カネ/ジャン=ユーグ・アングラード/ヴィルジニー・エフィラ

シネマ365日 No.3173

参加する意味を教えてやる 

特集「スピカは昇る、春の星座のベストコレクション」

社会からドロップ・アウトした中年男7人。アルコール依存症の元シンクロ選手のコーチ、彼女のパートナーで事故のため車椅子となった友だち、世に出ないヘタレの父親を、それでも好きでシンクロ会場まで応援に行く娘、彼ら10人が、男子シンクロ・チーム世界選手権で優勝し、アイデンティティを取り戻すお話。監督のジル・ルルーシュは「輝ける女たち」「スマイルコレクター」「この愛のために撃て」「テレーズの罪」など、物語性重視かつ、じっくりした展開が得意です。本作も「勝った・負けた」の勝負より、負け犬、独善者、現実逃避症の面々を、生きるってものすごい計画でも発明でもなんでもない、ちょっとした元気と前向きの気持ちを持てれば万事うまくいくのだと、監督は小さな声でささやきます。それを受けたように、冒頭主人公の一人ベルトラン(マチュー・アマルリック)は「予告しておく、大した話じゃない。単なる幾何学の矛盾の話だ」と切り出しました▼強度のウツで引きこもり、2年間失業中のベルトラン。人の話の腰を折り、何にでも水を差す面倒な性格で妻に逃げられたロラン(ギョーム・カネ)、純粋だが内気で口ベタ「面白くない話ばかりするな」とメンバーにバカにされるプールの用務員ティエリー、CDを17枚出したがヒットなし、娘のローラに「パパはデヴィッド・ボウイじゃない。栄光とは無縁なの」と残酷な事実を突きつけられるミュージシャンのシモン(ジャン=ユーグ・アングラード)、関わること全て失敗し、会社は4度目の破産目前のマルキュスはプール販売会社の社長、家のローンに悩むジョンは、宇宙飛行士並みの健診を受けてムカついている。コーチのデルフィーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)は、アルコール依存症。練習中ヴェルレーヌやリルケの詩を朗読するが、不倫相手に三行半を突きつけられ意気消沈、プールに出てこなくなった。「バカね」見かねてコーチとなったのがアマンダ。デルフィーヌとシンクロを組み、数々の大会でメダルを取ったが交通事故で一生車椅子となった▼ティエリーがネットで「男子シンクロ選手権」を知った。場所はスウェーデン。イギリス、ドイツ、イタリー、ロシア、日本、ニュージーランド、ポルトガルなどが参加する。「妄想はよせ。水球の前座も務められない俺たちが」と例によってロラン。ティエリーが声をあげた「僕はメダルが欲しい!」。おじさんたちは俄然勢いづく。男子シンクロナイズド・スイミング・フランス代表だとブチ上げたものの、コーチは男に振られ閉じこもり。プールサイドでわびしく手持ち無沙汰なおじさんたちの前に、車椅子のアマンダが近づいてきた。「こんな状態で勝てると思う?」「参加することに意義があるんだ」「ふざけるな。参加する意味を教えてやる。勝ちに行くことだ。着がえろ。ランニングだ。走れ。足を止めるな。何やっているのだ、ブタめ」。車椅子から飛ぶ怒号を受け、おじさんたちは足をもつれさせながら、石ころだらけの河原を走り出した。

 

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