女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2020年4月20日

特集「美しい虚無11」① 
マローボーン家の掟(2019年 サスペンス映画)

監督 セルヒオ・G・サンテェス

出演 ジョージ・マッケイ/アニャ・テイラー=ジョイ/ミア・ゴス

シネマ365日 No.3183

永遠の幻の中で 

特集「美しい虚無11」

セルヒオ・G・サンテェスの初監督作品。叙情的な映像に彩られたホラーの佳品です。家族愛というには残酷ですが、「永遠のこどもたち」と通底する、守るべき者のために、精神の異界に踏み入ってしまった長男ジャック(ジョージ・マッケイ)と、正気を失った彼と生きていこうと決めたアリー(アニャ・テイラー=ジョンソン)の純愛物語でもあります。時代は1968年、「遠い道のりとたくさんの苦難を乗り越え、僕らはとうとう一緒に居られる安全な場所を見つけた」というジャックの日記から始まります。母親と兄妹4人はイギリスからアメリカに渡った。「僕らを知る人は誰もおらず過去の闇は夏の光に飲み込まれたようだった。新しい友達もできた」。それが地元の少女アリーです。母親は何があっても兄妹は離れてはいけないと言い残した。彼らは結束を固め秘密の生活に入る。「5つの掟」(鏡を見るなとか、屋根裏部屋に近づくなとか)そのものは物語に直接影響を及ぼすものではありません。ある日窓辺にいた長女ジェーン(ミア・ゴア)が発砲され、木立の陰に立っている黒服の男を認める。ジェーンは大声で兄を呼んだ▼シーンは一転、6ヶ月後に変わる。ジャックが図書館で働くアリーと恋仲になる。弁護士のポーターはアメリカの新居を相続する書類の手数料200ドルと母親のサインを要求する。兄妹は死んだ父の残したお金に手をつける。ジェーンは母親の筆跡を真似サインする。末っ子のサムは幽霊の存在を感じていた。ジェーンは「あのお金は血で汚れたお金よ。呪われている」。ビリーはお金の箱を煙突から屋根裏部屋に蹴落とす。弁護士は偽筆を見破り、兄妹の父が凶悪な連続殺人犯であり、刑務所から脱獄、逃走中であることを新聞記事から知ります。彼は大金1万ポンドを盗んでいた。「妻子事件に加担か」という記事から金は兄妹が持っているはずと弁護士は睨む。弁護士は金が必要だった。ニューヨークに出て新生活に入るための準備金だ。偽造サインを非難した彼は金を用意しろと要求した▼ビリーは金の箱を取り戻すため煙突を降り、屋根裏部屋に入って何者かに襲われ、血だらけになって戻ってきた。父親が屋根裏部屋で生き、雨水を溜めハトやアライグマを食べて生きていると言います。兄と弟は喧嘩になり、ジャックは意識を失う。アリーは森でジャックの日記を見つけ読み始めた。ここで物語は再び6ヶ月前に戻る。発砲を受け、父親が自分たちを見つけたことを知ったジャックは兄妹を密室に避難させ父親に会いに行く。「金はここにある。返すから家に近づくな」しかし父親は満足せずジャックを殺そうとした。彼はジャックを倒し兄妹の隠れる部屋に行く。ジャックは後を追うが日記にはこうある。「遅かった」。読み終わったアリーは家に向かう。そこではジャックが、死んだジェーンやビリー、サムが生きているように会話する姿だった。突然出現した父親によって兄妹を殺されたジャックは、衝撃のあまり妹や弟の人格に憑依し、一人4役をこなしていたのだ。屋根裏に閉じ込めて餓死させたはずの父親は生きており、半年の間、父親は自分が殺した娘や息子と一緒にいた。アニーが屋根裏に入ると、兄妹たちの死骸と殺された弁護士がいた。身体中にカビが生えたような父親が襲ってきた。アニーは抵抗するが敵わない。ジャックは銃をとって駆け上り「彼女から離れろ。ここは僕らの場所だ」いうなり父親を射殺する▼アニーは医師と話している。「ジャックの多重人格が3か月も現れないとは、頭の中の弟や妹は眠ったらしい。しかし若くて健康で未来のある君が、あの家で暮らすことにした? 彼は永遠に君の面倒を見られない。ジャックとの間に家族は得られない。君が重荷を背負うことはない。薬を欠かさず飲ませること。弟妹を消すにはそれしかない」。アニーは礼を述べ家に戻った。室内は整然と片付けられ、ジャックが「おかえり」と迎える。アニーは医者からもらった抗精神病薬をジャックに飲ませていない。4人の幻を消す必要はないと彼女は知っている。初めて出会った時に自分が海辺で写した兄妹4人の写真をジャックに見せ「いまだに色あせていないわ」。ジャックは嬉しそうに穏やかな目で見やる。彼の心の中で兄妹は揃い、母親に約束した通り、彼は家族を守っているのだ。この美しい虚無の中で彼は永遠に生き、アニーはそれを見守るだろう。

 

あなたにオススメ