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特集「B級映画に愛をこめて」

2020年5月4日

特集「B級映画に愛を込めて14」④ 
青の寝室(2014年 劇場未公開)

監督 マチュー・アマルリック

出演 マチュー・アマルリック/ステファニー・クリュ

シネマ365日 No.3197

退路を絶った女 

特集「B級映画に愛を込めて14」

マチュー・アマルリックが巧みな監督術で絡めとる不倫映画。妻子ある男ジュリアンは4年前、故郷に帰ってきて農機販売で成功した。妻は美しく可愛い娘がいる。センスのいい広い家に住み何不自由ない。元同級生のエステルと出会った。彼女は薬局の店主ニコラ(彼も同級生)と結婚していた。ジュリアンが好きだったと積極的に近づき、二人は関係を持って11ヶ月続く。ホテルの青い部屋で情事を重ねる。エステルは噛む女でジュリアンは唇から血を出す。窓から見ているとエステルの夫がホテルめがけて近づいてきた。大慌てでジュリアンは部屋を出る。ジュリアンは現在勾留中。何の事件があったのかはなかなか明らかにされない。刑事の質問に答えるジュリアンのセリフを追うと、エステルと結婚する気はない、妻を愛している、家庭を捨てるつもりもない。情事の睦言は女に合わせて相槌を打っていただけだ…でも女は違う▼ジュリアンの取り調べは殺人の容疑だ。エステルの夫が死んで、妻と不倫中だったジュリアンが殺したのではと…ジュリアンはとっくに女に恐れをなし、遅ればせながら妻にやさしく、こまめに言葉をかけ、娘と一緒に家族サービスに努める。唇から血を流して帰宅する夫に不審を抱かない妻はいない。妻はジュリアンの浮気に気がついていたに違いない。ところがこの妻が殺された。死因は毒殺。ニコラの薬局から買って帰った手作りジャムに毒が入っていた。埋葬はすんでいたがニコラの死体が検視される。ジギタリスの致死量が検出された。犯人は…エステルである。この女性がすごい。私はジュリアンを愛している、夫は病弱だから殺すまでもない、長生きしそうだったらやったかもしれないけど、と裁判で供述し傍聴席から笑いが聞こえた。彼女は「万事順調よ」「次はあなたの番よ」と意味深な手紙をよこしていた。夫は片付けたから、あなたも身辺整理をお願いね、ということだろう。ところが男はグズグズしている。エステルは届け物のジャムに毒を混入し妻を殺す。作中彼女が犯人だとハッキリと示されませんがそんな筋書きです▼不倫劇を「壁紙の青い部屋」「大胆なベッドシーン」「木曜日に会える時は窓にタオルを干す」細やかな情景設定細で、マチュー・アマルリック監督はうっとりさせる。うろたえる男もリアルだ。対してエステルは終始堂々と胸を張り、いい大人が好き同士になってどこが悪いのよ、とビクともしないのである。判決は二人とも終身刑だった。「ほらね、一緒になれたでしょ」女は婉然と男に微笑みかける。75分の尺にまとめた手際をよしとするか、ラストをセリフ一言でまとめすぎて、ジョルジュ・シムノンの作品全てに通底する余韻と情感を消してしまったとするか。残念だけど後者ですね。それにしても、警察にしょっぴかれたのち、頭の中を渦巻くのは(後退、撤退、退却、逃走)しかない男を尻目に、退路を絶った女の強さよ。ステファニー・クリュは監督の妻。共同脚本を担当しています。

 

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