女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「煌びやかな墓場」

2020年5月13日

特集「煌びやかな墓場」⑤ 
嘆きの王冠 ホロウ・クラウン ヘンリー6世 第1部(2017年 事実に基づく映画)

監督 ドミニク・クック

出演 トム・スターリッジ/ソフィー・オコーネド/ヒュー・ボネヴィル/サリー・ホーキンス

シネマ365日 No.3205

絢爛たる悪徳 

特集「煌びやかな墓場」

本作はこれまでとガラリ打って変り、すこぶるつきの悪役が物語を極彩飾に彩ります。カリスマ君主ヘンリー5世の急逝後、わずか9カ月で王位を継いだヘンリー6世(トム・スターリッジ)。叔父のグロスター公(ヒュー・ボネヴィル)が摂政となった。国と王を支える忠義の臣、国王の信頼を一身に集める彼に妬みが付きまとい、王が17歳にもなっているのに実権を離さないと非難も聞こえる。その代表がサマセット公。一方で我こそ正統の王位継承者と知ったのがヨーク公。彼はブランタジネット家。ランカスター家の流れをくむサマセットは(我こそが王位の血筋だ)と不快をあらわにし、以後対立をはっきりさせる目印にヨーク側白バラ、サマセット側赤バラの印をつけることにする。子供じみていますが、これが30年続くイギリスの内乱、薔薇戦争の発端ですフランスではイングランドへの抵抗勢力が力を増し、「オルレアンの処女」ジャンヌダルク登場。彼女が率いる抵抗軍は都市を手中にしていきますが捉えられ火あぶりに。火刑のむごたらしさに正視できないイングランドの貴族たち。サマセットだけはワインを飲みながらニヤニヤと見物する。彼はフランスで孤立し奮闘する英軍を見殺しにする品性卑しい男です。討伐先の城主アンジューの娘マーガレットをヘンリー6世の王妃にとそそのかします。王は…愚かではないがあまりに時代の流れから外れていた。彼は傍観者だった。王の器ではなく、聖職者になればよかった若者です。父王が生き返れば優柔不断の息子の治世を見て、墓に逆戻りしたかも。マーガレットが毒蛇女です。サマセットと不倫関係を続けながら王妃となったが、グロスター公の妻エレノア(サリー・ホーキンス)が目の上のコブ。「貴婦人連中を従え宮廷を我が物顔、女帝気取りだわ。私を見下している。仕返ししたい」こういう悪女ほど強い。育ちのいいグロスター公の妻はまんまと罠にはまり、裏で画策したのが夫であるとマーガレットは王に吹き込み、忠臣は幽閉、暗殺となります▼それにしてもヘンリー6世の軟弱ぶりは目を覆いたい。グロスターを死に追いやったのはお前たちだと、サマセットに国外追放の断を下したのはいいが、マーガレットが耳元でとりなすとコロリ追放を取り消し「イギリスで自由に暮らせ」。ヨークは激怒する。王の面前で「それでも王か。その王冠は私の頭に飾られるべきだ。風格も決断も私の方が上だ。私こそ王にふさわしい」。アンチ・マーガレット&サマセットの閣僚たちもさすがに(ちょっと言い過ぎたな)。鯉口を切ったヨークは家に帰り妻に開戦準備を告げ、息子4人を呼ぶ。「エドワード、ジョージ、エドマンド」そして「リチャード!」。リチャードが逆光を背に黒い影となって入ってくる。跛行している。彼こそシェイクスピアが作り出した悪役ベスト3ランク入り確実の男…とされてきましたが再評価が進み、ジョセフィン・テイは長編推理小説「時の娘」で、稀代の悪王とされたリチャードの「犯罪」を謎解きしています。傑作です。さあ、これで第1部に出そろった主役たちが第2部になだれ込みます。悪役が秀抜でなければ映画は面白くならない。悪役とは何か。闇の深さと複雑かつ整然とした思考回路、人間を見抜き陥れる力、絢爛なる悪徳…。

 

あなたにオススメ